各施策で心掛けたのは従業員の声に応える教育

まず対策として行ったのは、対面で実施していた集合教育をEラーニングに移行したことです。コロナ禍でオンライン研修への理解が深まっていたこともあり、スムーズに受け入れられました。コンテンツは30分程度で視聴できる内容にし、業務時間内の受講を推奨するフォローも行いました。その結果、2022年1月は87%、2023年1月は83%、2024年1月は82%と高い受講率を維持できています。

コンテンツ充実のために工夫しているのは、アンケートで受講者の意見や要望を把握することです。結果を次年度の教育に反映させ、質の改善を図っています。例えば「マッチング拠出の仕組みがよく分からない」といった声が多い場合、次年度はその部分を重点的に解説するようにしています。特にうれしかったのは、2024年1月のアンケートで「今回の教育を受けて商品を見直そうと思った」と回答した加入者が1,200人以上いたことです。

また百貨店従業員への社用スマートフォン貸与が決まった時には、事前に社内調整を行い、DCアプリをプレインストールしました。全員にIDとパスワードを再通知した後、個別メールや社内通達も活用し、DC口座とアプリの連携を根気強く促しました。現場管理者を巻き込み、未設定者に対して朝礼などのミーティングで声掛けをしたことも効果的でした。結果としてWEBアクセス経験者(累積)は、2023年9月末では50.1%だったところ、2024年9月末には78.2%まで増加しました。

またグループ人財政策部では月に1回「DC Monthly News」を発行し、加入者の知識向上・定着を目的にした情報提供を行っています(図1)。バックナンバーのアドレスを一覧にまとめており、加入者は興味のあるタイトルをすぐに閲覧できる仕組みです。マッチング拠出の申請時期や、運営管理機関から運用状況が届く時期には、関連情報を掲載するのが定番となっています。最近では「金利のある世界」をテーマとして扱い、金利上昇局面で元本確保型を保有するリスクを解説しました。少しでも興味を持ってもらうために、できるだけ時勢に合った情報を提供することを心掛けています。

図1:DC(確定拠出年金)Monthly News 2025年6月号

出所:J. フロント リテイリング

 

53歳在籍者向けの「マイライフプランセミナー」は、講師に社労士、ファイナンシャル・プランナーなど社外の専門家を迎え対面で実施しています。このセミナーは、各人がより充実したセカンドライフを過ごすために「健康・資産・生きがい」の視点から準備するためのものです。定年は65歳ですが、「資産形成の情報は早めに聞いておきたい」という声も多く、53歳在籍者を対象にしています。セミナーではセカンドライフ全般の話題を扱い、資産形成面では年金や社会保険の話とともにDCや個人型確定拠出年金(iDeCo)の税制メリットを強調し、自助努力の重要性を伝えています。社内システムでは退職金総額を確認できる仕組みが整備されているため、セミナーの中で確認を勧めることで、自身の資産状況に関心を持ってもらえるよう工夫しています。