近年、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出す人的資本経営が注目されている。その観点からも企業年金の一つである企業型確定拠出年金(DC)制度の充実は、従業員の活躍やエンゲージメントを高める一因として企業価値の向上に資することが期待されている。企業型DC制度運営に熱心な企業はどのような取り組みを行い、そしてどんな成果を実現しているのか。DC制度運営に秀でた企業に贈られる「2025年DCエクセレントカンパニー」継続教育部門において優秀賞に輝いたJ. フロント リテイリングの取り組みを紹介する。
J. フロント リテイリングでは2024年、企業型確定拠出年金(DC)で投資信託を選ぶ加入者の比率が82.5%に達した。この数字の実現を支えたのが継続投資教育であり、参加率は驚異の80%超えとなっている。業務時間内に職場を離れられない従業員が多い中、同社はいかにして参加率を向上させてきたのか。多くのDC担当者が直面する“参加率の壁”を乗り越えるヒントを聞いた。
百貨店事業で直面した集合教育の難しさ
当社は百貨店事業を中心に、SC事業、デベロッパー事業、決済・金融事業など多様な事業を展開しています。そのため退職給付制度も複雑で、グループ内で5つのパターンが存在しています。大きな流れとしては、従来の退職一時金と確定給付企業年金(DB)だけの制度から、DCを加える方向にシフトしてきました。例えば大丸松坂屋百貨店では退職一時金40%、DB30%、DC30%という構成である一方、グループ内の比較的新しい会社ではDC100%の制度を採用しています。
当社では2011年にDCを導入して以降、継続投資教育として隔年での集合教育に注力してきました。しかし百貨店事業では年々店舗の人員が絞り込まれ少数体制となっていく中で、次第に参加率低下が目立つようになりました。2014年には全国で115回もの集合教育を実施しましたが、それでも職場を離れられない従業員が多くいました。
お客さまへの対応を最優先とする百貨店ならではの難しさに直面し、「どうすれば受講率を高められ、かつ中身のある教育ができるか」が解決すべき課題として見えてきました。
