各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三菱UFJ銀行のデータをもとに解説。
三菱UFJ銀行の投信売れ筋ランキングの2025年9月は、トップが「ニッセイ/シュローダー好利回りCBファンド2025-09(為替ヘッジなし・限定追加型)」だった。前月まで3カ月連続でトップ3だった「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」、「eMAXIS 日経225インデックス」、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」は1ランクずつ順位を落とした。前月第4位だった「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」も第5位に下がった。そして、前月は第7位だった「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は第6位に上昇。トップ10圏外から「三菱UFJ純金ファンド」が第9位にランクインした。
ランキング1位の「転換社債」はどんな商品?
三菱UFJ銀行の売れ筋ランキングでトップになった「ニッセイ/シュローダー好利回りCBファンド2025-09(為替ヘッジなし・限定追加型)」は、ファンドの信託期間の約5年内に償還が見込まれるCB(転換社債)に投資し、償還まで継続保有することを基本にしている。CBは株価が転換価格を超えて上昇すると株式に転換する権利を持った社債だが、同ファンドではCBの債券的側面を重視し、好利回りで定期的な利子収入が得られ、株価の下落時には償還時に額面で戻る債券の価値が価格下落の下支え要因になることを重視して銘柄を選定している。
2025年7月3日時点で作ったモデルポートフォリオでは、ポートフォリオの利回りが年6.16%だった。為替ヘッジありの場合、5年間の為替ヘッジコスト(約2.34%)を考慮し運用管理費用(年1.1495%程度)も合わせて控除すると、実質的な最終利回りが年2.67%程度になった。償還まで持ち切れば、おおむね年2.67%程度の収益が得られることになる。一方、為替ヘッジなしの場合は、為替ヘッジコストがかからないため、モデルポートフォリオの最終利回り年6.14%から運用管理コストを差し引いて最終利回り年4.99%になる。実際の投資収益は為替差損益によってプラスマイナスが生じるため、投資利回りを確定することができない。
一般的な傾向として信託期間が4年~5年程度の限定追加型のファンドで、運用の中身が信託期間内に償還を迎える債券を組み入れて償還まで継続保有する運用を行う場合は、「為替ヘッジあり」の方が売れ筋になるケースが強い。為替変動リスクを避けることによって、購入時に実質的な利回り水準がおおむね確定できるためだ。国内の金利水準と比較して実質的な利回り水準が魅力的かどうかを判断すればよい。たとえば、10月募集の個人向け国債5年固定金利型の利回りは年1.22%になっている。同ファンドの「為替ヘッジあり」のヘッジコストや運用管理費用控除後の最終利回り2.67%は国内金利との比較では十分に魅力的な水準といえる。
しかし、同ファンドの場合は、「為替ヘッジなし」の方が人気を集めている。募集開始は8月18日で9月19日までが当初募集となり、継続申込は9月22日に設定され10月21日まで追加募集されている。「為替ヘッジあり」は設定日の純資産総額が約70億円だったことに対し、「為替ヘッジなし」は約258億円だった。そして、追加募集によって10月15日時点では「為替ヘッジあり」が約99億円、「為替ヘッジなし」が約328億円にまで純資産残高が増えている。「為替ヘッジなし」の販売が伸びるのは株式ファンドに多い。CBの株式ファンドに近い性格が、為替ヘッジのあり・なしの部分ではより強く評価されているのかもしれない。