各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のデータをもとに解説。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投信売れ筋ランキングの2025年9月のトップは前月に引き続き「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」だった。前月は第2位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン為替ヘッジなし(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)は第3位に後退し、第2位には「モルガン・スタンレー 米国株式インサイト戦略ファンド(為替ヘッジなし)」がランクインした。また、トップ5圏外から「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が第4位に、「三菱UFJインデックス225オープン」が第5位にランクインした。

 

新ファンド「米国株式インサイト戦略ファンド」のインパクト

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の売れ筋ランキングで第2位にランクインした「モルガン・スタンレー 米国株式インサイト戦略ファンド(為替ヘッジなし)」は、9月2日に新規設定されたばかりの新ファンドだ。米国を中心に日本を含む世界各国(新興国を含む)の株式を投資対象とし、優れた成長性を有するエスタブリッシュ企業と革新的だが完全には理解されていないビジネスモデルを持つエマージング企業に厳選投資するファンドだ。「ディスラプティブ・チェンジ(破壊的変化)」をもたらすようなテクノロジーやビジネスモデルを持つ企業に長期的な目線で投資することを特徴としている。

同戦略の代表ファンドの組み入れ上位銘柄は、統合クラウドプラットホームを開発して大手インターネットサービスプロバイダーやクラウドプロバイダーなど13000のネットワークと接続する「クラウドフレア」、電気自動車(EV)の完全自動運転やロボタクシーなどAI領域で先行する「テスラ」、自動運転技術で物流の改革に挑む「オーロラ・イノベーション」、BNPL(後払い決済)という新たな決済モデルを提供するフィンテック企業「アファーム・ホールディングス」などを組み入れている。組み入れ銘柄数は27銘柄で、上位10銘柄が純資産総額の約6割を占めるという集中投資ポートフォリオになっている。国・地域別比率では現在のところ米国企業100%で構成し、エスタブリッシュ企業が62.8%、エマージング企業が37.2%という配分になっている。

同戦略は2002年9月からの運用実績があるが、米国株式市場の上昇局面ではより大きな上昇率を示し、下落局面で市場平均以上に下落するという傾向がある。直近では「コロナ・ショック」後の2020年3月末から2021年12月末までに米国株式(S&P500配当込み、米ドルベース)が89.5%上昇する間に同戦略は114.7%の上昇を記録。また、2022年9月末から2025年1月末までの期間でも米国株が74.6%の上昇となる中で116.7%の上昇になった。

「モルガン・スタンレー 米国株式インサイト戦略ファンド(為替ヘッジなし)」は9月2日の設定時に190億円以上の資金を集め、その後も純資産残高は拡大し、10月7日には約407億円と設定から約1カ月で400億円を超えた。この間に基準価額は緩やかに上昇し、10月7日時点では1万1302円になっている。9月2日時点で147円台だったドル円が10月7日時点では150円へと円安ドル高が進んだことも考慮する必要はあるだろうが、為替の1.7%程度の円安に対して基準価額は13%超も値上がりしており、組み入れ銘柄の株価上昇の効果を強く受けていると考えられる。このパフォーマンスも人気が継続していることの背景だろう。今後を見守りたい。