最近、経済メディアで「脱米国」と見かけるように

ABUSA(エーブサもしくはアブサ)という言葉をご存じでしょうか。Anyway But USAの略称だそうです。直訳すると、「米国以外ならどこでも」という意味ですね。

このような言葉が出てきたのは、今年の5~6月あたりからでしょうか。4月2日トランプ大統領が「相互関税による輸入制限により、米国の巨額かつ恒常的な財貿易赤字に寄与する貿易慣行を是正する」と題した大統領令に基づき、追加関税ならびに相互関税の関税率を公表したことにより、株価の急落を招いたことが発端だったと思います。

恐らくマーケット関係者からすれば、「発言の度にマーケットを乱高下につながるトランプ大統領には付き合い切れない。米国以外のマーケットならどこでも良いから、投資資金をシフトさせよう」ということなのでしょう。

確かに、今の米国株式市場は、さまざまな観点から「割高ではないか」という疑念がつきまといます。

たとえば将来12カ月の予想利益ベースで計算したForward PERを見ると2024年末から2025年のそれは19~22倍です。

また、これはよく言われていることですが、マグニフィセント7と称される一部の巨大テック企業の株価が大きく上昇した結果、S&P500やNASDAQ100といった指数の価格形成が歪められている恐れがあること、株式市場全体の時価総額をGDPで割って求められる「バフェット指数」が、足元では200%近くをつけたことも、米国の株式市場が割高とされる根拠と言われています。ちなみにバフェット指数は通常、100%を超えると株式市場が割高だと判断されます。

さらに言えば、米国のGDPが世界のそれに占める割合は約25%ですが、米国株式市場の時価総額は世界のそれの約60%に達しており、実体経済から見て明らかに株式市場が割高に評価されているという見方もできます。

割高な株式市場と、トランプ大統領の関税政策により、米国株式市場はこの先、大きな調整局面を迎えるのではないか、という見方が方々から聞かれるようになってきました。こうしたなかで登場したのが「ABUSA」というわけです。