各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三菱UFJ銀行のデータをもとに解説。
三菱UFJ銀行の投信売れ筋ランキングの2025年8月は、トップ3が前月と同じだった。トップが「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」、次いで、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」だった。第4位には前月第7位だった「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」が上がり、前月は第4位だった「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は第7位に後退した。前月第8位だった「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」が第6位に上がり、トップ10圏外から「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」が第10位にランクインした。
「S&P500」が下がって「グロース・オポチュニティ」が上がる
三菱UFJ銀行の売れ筋ランキングで「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が前月の第4位から第7位にランクダウンした。8月の「S&P500」の動きだけをみると、月間で1.91%上昇し、5月以来4カ月連続の上昇を記録した。上昇が続いたために、「利益確定」の売りが出やすかったのかもしれない。米国株式市場は、9月FOMC(16日、17日の開始)における利下げを先取りして9月上旬に株高局面となっているが、米国の経済指標では雇用面の弱さが目立つようになってきた。DXやAIへの投資ブームによって米国テクノロジー企業の業績の好調さが維持されてきているが、テクノロジー企業とその関連以外の分野において景気の減速感が広がっていないか懸念されるところだ。売れ筋ランキングにおいて「S&P500」の人気が衰えたのには、米国景気への警戒感もあるのだろう。
一方、「S&P500」インデックスファンドの人気後退を横目に「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」は大きく順位を上げた。このファンドは米国株式を主たる投資対象にしているファンドだが、個々の企業調査を徹底し、景気循環による影響を超えて3年~7年を展望して成長が持続できると判断する銘柄に厳選投資している。たとえば、「S&P500」を構成する500銘柄の中から、業績が悪く、今後の業績見通しも悪い銘柄を除外し、景気の動向にかかわらず安定的な業績をあげられる見通しの銘柄や成長が続いている銘柄のみに投資することができれば、景気悪化によって「S&P500」が下落したとしてもアクティブファンドはプラスの成績を維持することも可能だろう。景気の先行きに不透明感が強まるほどにアクティブファンドへの期待は高まる傾向がある。
アクティブファンドの代表といえば売れ筋トップ3にある「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」も2025年の基準価額の推移では、4月の下落時の下落率を抑えたことから、出直りで目立って優れたパフォーマンスをみせた。4月の急落時にインデックスファンドよりも大きな下落率となり、その後に鋭角的に回復した「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」とは対照的な値動きになっている。それぞれのファンドの個性が感じられる動きだ。