最高値を更新した米株価は行き過ぎか~企業財務とバブル~
前述のパウエル議長の講演を受け、22日のダウ工業株30種平均は846ドル高と大きく値を上げ、8カ月ぶりに最高値を更新しました。その後は高値警戒感から少し調整していますが、こうなると少し気になるのが、株価が強すぎないかという点です。
エコノミストである筆者は、普段株価の話はあまりしないのですが、今回は一つの糸口として、米企業の財務状況から株価調整の可能性を探ってみようと思います。後ほど詳しく紹介しますが、過去を振り返ると、米国では企業の財務レバレッジが異常に高まったときにバブルが発生し、その崩壊とともに株価が大きく調整しています。
それではさっそく見ていきましょう。まず、図表3ですが、これは米企業の財務レバレッジと景気後退を示したグラフです。ここでは財務レバレッジを示す指標として、債務キャッシュフロー倍率を採用しています。債務キャッシュフロー倍率とは、企業の総負債を在庫品評価調整後のネットキャッシュフローで割ったもので、いわばどのくらい金を借りてリスクをとっているかを示した指標です。その値が高いほどレバレッジが効いていることを示しています。
<図表3 米企業の債務キャッシュフロー倍率と景気後退>

これを見ると、貯蓄貸付組合(S&L)危機が発生して景気後退となった1991年(図中(1))、ITバブル崩壊で景気後退となった2001年(図中(2))、リーマンショックで景気後退となった2008年(図中(3))の、いずれも直前に企業の債務キャッシュフロー倍率が9倍を超える高さになっていることが分かります。
このパターンから類推すると、新型コロナによる景気後退期も債務キャッシュフロー倍率が9倍近くになり、その後9倍を超えていることから、仮に新型コロナが発生していなくても何らかのバブルが発生・崩壊し、結局景気後退になっていたかもしれません。