ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長は予想通り9月利下げを示唆しました。これを受けNYダウは8カ月ぶりに最高値を更新しましたが、ちょっと強すぎるような…。米国では企業の債務キャッシュフロー倍率が高まるとバブルが発生し、その崩壊で株価が暴落するパターンを繰り返してきました。果たして今は? バブルの現在地を確認します。
※本稿は、8月27日に「トウシル」に掲載された人気エコノミスト愛宕伸康氏の記事「企業財務から見た米株価急落のパターン~ジャクソンホールとバブルの現在地~」を抜粋・編集しています。
ジャクソンホール会議でパウエル議長は9月利下げを示唆
米連邦準備制度理事会(FRB)と市場は上手にキャッチボールをしているようです。8月21日から23日にかけて開催されたカンザスシティ連邦準備銀行主催のジャクソンホール会議で、FRBのパウエル議長は市場の期待通り9月利下げを示唆し、株価は大幅高で反応しました。
各国中央銀行のトップが集まるジャクソンホール会議で、トランプ大統領からの不当な圧力に毅然と対応する姿を応援するかのごとく、万雷の拍手を浴びて登壇したパウエル議長は、8月1日に発表された7月雇用統計でようやく確認できた雇用悪化を引き合いに、「ベースラインシナリオとリスクバランスの変化は、われわれの政策スタンスの調整を正当化するだろう」と、事実上、9月の利下げを宣言しました(図表1)。
TOP 3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕 企業財務から見た米株価急落のパターン~ジャクソンホールとバブルの現在地~(愛宕伸康)
企業財務から見た米株価急落のパターン~ジャクソンホールとバブルの現在地~(愛宕伸康)
2025/8/27
愛宕 伸康
企業財務から見た米株価急落のパターン~ジャクソンホールとバブルの現在地~(愛宕伸康)
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ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長は予想通り9月利下げを示唆しました。これを受けNYダウは8カ月ぶりに最高値を更新しましたが、ちょっと強すぎるような…。米国では企業の債務キャッシュフロー倍率が高まるとバブルが発生し、その崩壊で株価が暴落するパターンを繰り返してきました。果たして今は? バブルの現在地を確認します。
目次
ジャクソンホール会議でパウエル議長は9月利下げを示唆
同時にデータ・ディペンデントの姿勢を堅持することも言明
最高値を更新した米株価は行き過ぎか~企業財務とバブル~
足元は株価暴落を招くようなバブルの様相にはなっていない
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「企業財務から見た米株価急落のパターン~ジャクソンホールとバブルの現在地~」
ジャクソンホール会議でパウエル議長は9月利下げを示唆
米連邦準備制度理事会(FRB)と市場は上手にキャッチボールをしているようです。8月21日から23日にかけて開催されたカンザスシティ連邦準備銀行主催のジャクソンホール会議で、FRBのパウエル議長は市場の期待通り9月利下げを示唆し、株価は大幅高で反応しました。
各国中央銀行のトップが集まるジャクソンホール会議で、トランプ大統領からの不当な圧力に毅然と対応する姿を応援するかのごとく、万雷の拍手を浴びて登壇したパウエル議長は、8月1日に発表された7月雇用統計でようやく確認できた雇用悪化を引き合いに、「ベースラインシナリオとリスクバランスの変化は、われわれの政策スタンスの調整を正当化するだろう」と、事実上、9月の利下げを宣言しました(図表1)。
<図表1 パウエルFRB議長による利下げへのメッセージ>

同時にデータ・ディペンデントの姿勢を堅持することも言明
もちろん、トランプ関税の影響によるインフレリスクの高まりへの警戒も同時に示し、「金融政策はあらかじめ設定されたコースに従っているわけではない。米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーは、データとそれが経済見通しやリスクバランスに与える含意に対する評価のみに従って決定を行う。われわれはそのアプローチから決して逸脱しない」と、従来の決定方針に全く揺らぎがないことも明言しました(図表2)。

このように、一見出来レースのように見える今回のジャクソンホール会議での議長講演は、「データ・ディペンデント」(データに基づく決定)という譲れない一線を守りながら、かつ雇用悪化に手遅れにならないよう手を打った(正確には、そのためのコミュニケーションを行った)という、いってみればプロをうならす絶妙な内容だったように思います。
パウエル議長にとって今回が最後のジャクソンホール会議。
講演の最後で議長は、「毎年、このシンポジウムは連邦準備制度の指導者が主要な経済思想家からアイデアを聞き、われわれが直面する課題に焦点を当てる機会を提供している。カンザスシティ連銀が40年以上前にボルカー議長をこの国立公園に誘ったのは賢明であり、私はその伝統の一部であることを誇りに思う」と述べましたが、決して単なる社交辞令ではないように感じました。
ちなみに、このジャクソンホール会議(Jackson Hole Economic Policy Symposium)は、1982年にカンザスシティ連銀が釣り好きのボルカー議長(当時)に登壇してもらうため、この地を講演場所に選んだとされ、ジャクソンホール(Jackson Hole)は地名です。
コンサートホールなどの「Hall」と勘違いしている人も少なくありませんが、「Hole」は谷。グランドティトン国立公園とイエローストーン国立公園に囲まれた盆地を指し、ジャクソン湖があります。