パフォーマンスを比較してみると見えてくるもの
まず、両者の国・地域別組入比率から見てみましょう。まず「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の6月末データです。組入比率の高い順に並べると、
アメリカ・・・・・63.4%
日本・・・・・4.8%
イギリス・・・・・3.3%
カナダ・・・・・2.8%
フランス・・・・・2.4%
ドイツ・・・・・2.3%
スイス・・・・・2.1%
台湾・・・・・1.9%
インド・・・・・1.9%
ケイマン諸島・・・・・1.8%
対して「なかの世界成長ファンド」の国・地域別組入比率は、
米国・・・・・29%
フランス・・・・・・9%
中国・・・・・・8%
台湾・・・・・・8%
イギリス・・・・・・6%
インド・・・・・・6%
オランダ・・・・・・5%
スイス・・・・・・5%
デンマーク・・・・・・3%
韓国・・・・・・2%
日本・・・・・・2%
その他・・・・・・14%
明らかに違いがあります。「なかの世界成長ファンド」はMSCI-ACWIを参考指数としていますが、それへの連動を目指す「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に比べて米国の組入比率が圧倒的に低く、フランスやイギリス、ならびに中国やインドといった新興国の組入比率が高めになっています。ちなみに「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の国・地域別組入比率は、基本的に国別の株式市場時価総額の割合を基準に決められています。
「なかの世界成長ファンド」の国・地域別組入比率が、参考指数のそれと大きく異なる点が、同ファンドのアクティブファンドとしての付加価値なのでしょう。
では、実際の運用成績を見てみましょう。アクティブファンドの場合、1年程度の運用期間では、運用成績について云々できないことは分かっているのですが、傾向は分かるかも知れません。
「なかの世界成長ファンド」の運用開始が2024年4月25日なので、同日における両ファンドの基準価額を100として指数化したのが、添付したグラフです。
グレーのラインは「なかの世界成長ファンド」の基準価額から見た「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」との乖離率を示しています(右軸)。このラインが0%を下回っている時は、「なかの世界成長ファンド」の運用成績が、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のそれに劣後していることを意味します。
●「なかの世界成長ファンド」と「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のパフォーマンスとその乖離率

このグラフを見て、傾向について言うならば、「なかの世界成長ファンドは、マーケット全体の上昇局面でインデックスファンドには追い付けないが、下落局面では比較的強い下値抵抗力を持つ」ことです。
2024年4月25日から7月11日にかけて、MSCI-ACWIが上昇していく過程で、「なかの世界成長ファンド」の基準価額は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のそれに対して4.47%劣後していましたが、8月5日に株価が急落した局面では、逆に「なかの世界成長ファンド」の基準価額が、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のそれを0.83%上回りました。
これは相場の下落局面において、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に比べ、「なかの世界成長ファンド」の下落が小さく抑えられたことを意味します。
しかし、2024年末にかけての相場回復局面で、「なかの世界成長ファンド」の基準価額は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のそれに大きく劣後し、2025年1月7日には、13.86%もアンダーパフォームしました。
そして、4月7日に再び相場が急落した場面で、「なかの世界成長ファンド」の基準価額は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のそれに対して、4.18%下回るところまでパフォーマンス差が縮小しています。このように下落相場に対する抵抗力が強い点は、アクティブファンドとしての付加価値が発揮されているとも言えます。
ただ、マーケット全体が上昇する局面では、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の上昇スピードが速く、「なかの世界成長ファンド」はそれに追いつけない状態が続いています。ちなみに7月24日時点で、「なかの世界成長ファンド」の基準価額は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に対して14.51%負けています。
さまざまなメディアを通じての発言内容によると、なかのアセットマネジメントとしては、「いずれ米国株はピークをつけ、崩れるのだから、その時に強みを発揮する」という考え方かもしれません。
とはいえ、永遠に上げ続ける相場がないのと同様、永遠に下げ続ける相場もまたありません。
次の相場急落時にも、「なかの世界成長ファンド」の下落率は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のそれに比べて小さく抑えられる可能性はあります。が、相場が底を打って上昇に転じた時の上昇スピードで、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に追いつけなければ、また「なかの世界成長ファンド」の運用成績は、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に負けることになります。
そうなった場合に、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に比べて高い信託報酬率でありつつも、運用成績では負けていることをどう説明していくのかに受益者は注目すべきです。