各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、野村證券の6月のデータをもとに解説。

野村證券の投信売れ筋ランキングの2025年6月は、前月第2位だった「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i日経225)」がトップに返り咲き、前月トップだった「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は第2位に後退した。また、第3位だった「eMAXIS S&P500インデックス」を押しのけて、前月は第7位だった「eMAXIS 日経225インデックス」が第3位に上がった。そして、前月第6位だった「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」が第5位に、第10位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が第7位になった。トップ10圏外から「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」が第9位に、「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」が第10位にランクインした。

 

◆積極的なリスクテイクに姿勢が転換?

野村證券の6月の売れ筋上位ファンドの顔ぶれは、野村證券を通じて投資する投資家がより積極的にリスクを取りに動いている様子が見て取れる。目立って順位を上げているのは、国内株式インデックスファンドだ。国内株式は国内の投資家が資産運用を考える際に検討する最初の代表的なリスク商品といえる。これまでは、国内株式市場に比べて、米国株式市場の方が高い収益が見込まれたために資金が外国株式に多く流れていたが、景況感の把握も含め企業情報を理解しやすいのは国内株式といえる。

これまでは、株価の動きとともに、ドル高・円安によっても外国株式への投資が正当化されてきた。しかし、米トランプ政権のコロコロと変わる政策や外交姿勢等によって米国への信認が低下し、米ドルや米国株式の「一人勝ち」といえた絶対的な地位が揺らいでいる。日銀が利上げの機会をうかがい続けていることからも、為替市場では円高・ドル安に動きやすい環境になっている。外国資産に投資するよりも国内資産の方が為替リスクを回避できるという考え方もできるだろう。

一方、ランクを上げた「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、特定業種の企業に厳選投資するファンドで、より高いリスクを取るファンドだ。まして、エヌビディアを筆頭としてここ数年は半導体関連株の値上がりが大きく、割高な水準にあるという指摘が強かった。このため、2025年4月の急落時には最も大きく下落したグループの1つだった。それほど大きな価格変動のあるファンドの人気が再び高まっているのも、積極的なリスクテイクを感じさせる。

さらに、株式へのリスクヘッジの手段としては債券への分散投資が一般的には実施されるところだが、野村證券の6月のランキングでは、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」や「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」の順位がアップしている。株式とは異なる値動きが期待される資産として安定的な値動きが期待される債券ではなく、「ゴールド」や「リート(不動産投信)」という異なるリスク資産が選ばれているようだ。リスクヘッジにあたって、「価格を安定させよう」というよりも、「他のリスクを組み合わせることで、あわよくば両方で収益を稼ぎたい」というような、積極的にリスクを取る姿勢がみてとれる。今のところ、株式と「ゴールド」の組み合わせで保有した投資家は、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が一貫した右肩上がりを続けていることで、良い成績を獲得できている。