需給ひっ迫で23年3期に利益1兆円 今期は3社そろって減益、関税に懸念

次に業績を確認しましょう。日本郵船の株価の急騰は、利益の急拡大が背景にあります。

日本郵船の利益は22年3月期に急増しました。コロナやロシア・ウクライナ紛争といった情勢不安から海運の需要がひっ迫し、市況が高騰したため利益が大きく拡大しました。経常利益は23年3月期に1兆1000億円に達します。

利益はピークから落ち着いていますが、従来の水準は大きく上回ります。背景には23年10月に発生したイスラエルとハマスの衝突があります。紅海(スエズ運河)周辺の船舶への攻撃が相次いだことから、アフリカ大陸の南側を通る喜望峰ルートが定着してきました。航行距離が伸びたことで需給が引き締まり、日本郵船の利益を支えています。

日本郵船の業績を表した図表(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:日本郵船 IRデータブックより著者作成
 

今期(26年3月期)の見通しは減収減益の予想です。減収は子会社(日本貨物航空)の譲渡を予定する航空運送を今期の予想には含めていないことが主因です。また、減益はコンテナ船が中心で、新造船の竣工に伴う需給の軟化を見込みます。

【日本郵船の業績予想(2026年3月期)】

・売上高:2兆3800億円(-8.1%)
・経常利益:2550億円(-48.1%)
・純利益:2500億円(-47.7%)
※()は前期比
※2025年3月期時点における同社の予想

出所:日本郵船 決算短信

なお、予想の減益率は海運3社で最小です。ただし、商船三井と川崎汽船は業績予想に米国の関税影響を加味していますが、日本郵船は含めていません。日本郵船は、関税影響は経常利益ベースで最大1000億円の下押しと試算します。

【海運大手3社の予想経常利益(2026年3月期、前期比)】

・日本郵船:2550億円(前期比-48.1%)
・商船三井:1500億円(同-64.3%)
・川崎汽船:1050億円(同-65.9%)
※日本郵船は関税影響含まず、他2社は関税影響を含む

出所:各社の決算短信