<前編のあらすじ>

IT企業で働く34歳の大西誠さん(仮名)は、6歳年下の亜里沙さんと2年ほど同棲生活を送っています。

大西さんがなかなか結婚に踏み切れないのは、2人の間に存在する大きな経済格差が原因でした。裕福な家庭で育った亜里沙さんに対して、事あるごとに金銭感覚の違いを感じてしまうのです。

また、大西さんは一人暮らしをする母親のことも気になっていました。姉から母親が月5万円ほどしか年金をもらっていない事実を聞かされ、久しぶりに実家に帰ることにします。

●前編:【「自分には出来すぎた彼女」との格差に苦悩…34歳IT企業会社員が交際相手との結婚に踏み切れない「最大の要因」】

同棲生活で見えてきた経済感覚の違い

私は今年35歳になる会社員です。取引先の担当者として知り合った亜里沙と暮らすようになって、もうすぐ2年になります。

亜里沙は仕事ができるだけでなく、人目を引く美形で陽気な愛されキャラ。お嬢様育ちでありながら、意外に家庭的で料理も得意です。容姿も稼ぎも人並みの私には出来すぎた相手ですが、これまで結婚に踏み切れなかった最大の要因は経済感覚の違いでした。

神奈川の商業地に名字を冠したビルを何棟か持つ亜里沙の家族は、暮らしぶりも交友範囲も私の実家とは全然違います。亜里沙は小学校から高校まで地元の有名私立で学び、その後はアイビーリーグの大学に留学しています。

それに対し、私は地方で小さな定食屋を経営する両親の下に生まれました。父は私が中学生の時に亡くなり、以降は母が一人で店を切り盛りしながら姉と私を育ててくれました。

ヤンキーだった姉は高校を卒業する前に妊娠が発覚し、出産後に義兄と籍を入れました。すぐに別れてしまうのだろうと思っていましたが、その後は夫婦揃って義兄の実家の工務店を手伝うようになり、今は幼稚園から高校生まで5人の子育てに追われています。

一方の私は、自分で言うのもなんですが、田舎の中学や高校では常に成績はトップクラスでした。私自身は母に迷惑をかけたくないので高校を出たら働くつもりでしたが、高校の担任から「将来を考えて大学に行くべきだ」と諭され、母も「お前には進学を諦めてほしくない」と言うので、学費免除制度があった大学に進むことにしたのです。

卒業後はサークルの先輩がいたスタートアップ企業に拾われ、その後、時流に乗った会社は急成長。事業を拡大する中で社長から広報や宣伝の仕事を任され、PR会社に勤務している亜里沙と知り合いました。

そもそも社長が専務らと3人で学生時代に立ち上げた会社ですから、社内の人間関係は大学の体育会そのものです。社員の個性や意見は尊重しますが上意下達が徹底されていて、宴会と言えば会社近くの居酒屋が定番。そもそも亜里沙が私に興味を持ったのも、泥臭いうちの社風が逆に新鮮に感じられたからという話でした。