母親から語られた幼少期のエピソード

「お子様から同意が得られれば、日常生活の困難さの文書や病歴・就労状況等申立書の作成は私がすることもできます。そのためには、ご家族からヒアリングをすることになります。病歴・就労状況等申立書の方でいうと、例えば幼少期の状況とは『幼稚園の頃の様子はどうでしたか?』ということです」

「それなら沢山あります。例えば……」

母親は視線を上に向け、長男の様子を語り出しました。

その内容は概ね次のようなものでした。

・幼稚園での歌の練習やお遊戯会の練習などが苦手だった(団体行動が苦手)
・友達と遊ぶよりも一人遊びを好み、時間を忘れて何時間でも遊んでいた
・夕食の時間になり母親が遊びを止めさせようとすると、大声で泣き出して手が付けられなかった
・味や臭いに敏感で好き嫌いがとても多かった。特に野菜や乳製品は食べられなかった

「いまおっしゃっていただいたようなエピソードを、幼稚園、小学生、中学生、高校生、大学生、大学卒業後から現在までを息子さん2人分それぞれでまとめます。同様に、医師に渡す参考資料もご家族からヒアリングをして私がまとめます。ご安心ください」

「分かりました。その時々の息子たちの状況をお伝えすればよいということですね。それならできそうです。資料が揃ったら、すぐにでも障害基礎年金を請求したいと思います」

「残念ながらそれはできません。法律上、障害年金(障害基礎年金および障害厚生年金)の請求は、原則、初診日から1年6カ月を経過した日以降になるからです」

「1年6カ月……。そんな先になってしまうのですね。こんなことになるなら、もっと早く相談していればよかったです。でも今さら悔やんでも仕方がありませんよね。まずは息子2人を説得し、できるだけ早く病院を受診してもらうようにします」

面談の最後に母親はそう言いました。

筆者との面談後、母親は息子たちに事情を説明。まずは病院を受診するよう説得をしました。最初は2人とも面倒くさがってよい返事をしませんでしたが、母親が繰り返し説得をすることで何とか病院を受診してくれました。その後、発達障害の検査をしたところ、2人とも発達障害の診断を受けました。

息子2人の障害基礎年金が認められるように、こちら側でできることはすべてやる。

母親と筆者はそのような気持ちで、初診日から1年6カ月を経過した日以降にすみやかに請求できるよう、現在も着々と準備を進めています。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。