<前編のあらすじ>

68歳の和田圭子さん(仮名)には、37歳の長男と34歳の次男がいますが、2人ともひきこもり状態にあります。父親は既に他界しており、母親の年金約12万円とパート収入で3人の生活を支えている状況です。

息子たちは大学卒業後、アルバイトを経験しましたが、仕事も人間関係もうまくいかず、長続きしませんでした。父親の生前は息子たちと激しい対立があり、息子たちは完全にひきこもるようになりました。

息子たちは働く気配はなく、家事も手伝いません。高齢となった母親は体力の限界を感じており、貯金も乏しい中、家計破たんを心配しています。

前編:【家計破たんの危機】「仕事には嫌な思い出しかない」母親の年金に頼る30代ひきこもり兄弟が頑なに労働を拒むワケ

障害基礎年金で家計の不足分をカバーすることも検討

息子は2人とも発達障害の疑いがあり、仕事をして収入を得るのが難しい。日常生活でもトラブルを起こしがち。それらを考慮し、筆者は障害年金の検討をすることにしました。

ただし、障害年金の説明をするにはもう少し情報が必要になります。

そこで筆者は母親からさらに聞き取りをすることにしました。

障害年金では「その障害で初めて病院を受診した日がいつなのか?」を確認することから始めます。

母親によると、息子は2人とも発達障害で精神科や心療内科を受診したことはないとのこと。すると、これから初めて病院を受診することになります。

これから初めて病院を受診した日(初診日)に、息子2人は国民年金に加入中なので、障害基礎年金の請求をすることになります。

息子2人の国民年金は、父親亡き後の20代からずっと免除を続けてきたので未納状態ではないことも分かりました。よって障害基礎年金を請求する権利は発生します。

そこまで確認できた筆者は、次に年金額について説明することにしました。

障害基礎年金には1級と2級があります。より障害状態が重い方が1級で年金額も多くなっています。発達障害で1級に該当することは稀なので、仮に2級に該当した場合の年金額を母親に伝えました。

■障害基礎年金の2級に該当した場合の金額

(2024年3月分まで)
障害基礎年金2級 6万8000円
障害年金生活者支援給付金 5310円
合計 7万3310円

(2025年4月分から)
障害基礎年金2級 6万9308円
障害年金生活者支援給付金 5450円
合計 7万4758円

金額を確認し終えた母親は疑問を口にしました。

「なぜ2025年4月分から年金額が増えるのでしょうか?」

「公的年金は、物価や賃金の変動に応じて金額が増えたり減ったりする仕組みがあるからです。ここ数年は物価も賃金も上昇傾向にあるので、それに応じて年金額も若干増えることになったのです」

「そうなのですか。年金は減る一方だと思っていましたが、増えることもあるんですね」
母親は、それは意外だったといわんばかりに目を大きくしました。