前回、前々回でみたように、若者の負債増加の主因が「住宅ローン」の残高増加であることは間違いありませんが、「奨学金」も少なからず影響していそうです。
今回は、奨学金のうち、若者の負債増加につながる「貸与型」の実態をみてみたいと思います。
●参考記事
・年収はそれほど上がらないのに負債は大幅増…令和の若者の負担が親世代と比べて“格段に増えている”理由
・若者の住宅ローン残高はなぜ増えた? 「住宅価格の高騰」「持ち家比率の高まり」だけでは語れない“背景”とは
人数、金額ともに増加する貸与型奨学金の利用
(独)日本学生支援機構の調査によると、貸与型奨学金の利用者数は、2003年の103万人から16年には160万人まで増加、19年には145万人となっています。1人当たりの利用額(貸与額)も、03年には平均で1年間に61.7万円でしたが、10年以降は年間70万円を超えています(図表1)。
【図表1】貸与型奨学金の利用者数と1人当たり年間利用額
(出所)(独)日本学生支援機構「奨学事業に関する実態調査」 ※2019年で調査終了
大学進学率がこの20年余りで45.1%→60.8%へと高まり(図表2)、4年間の学費も、国立大で219万円→243万円、私立大では345万円→397万円と上昇する中で(図表3)、親の所得は2015年前後まで下落傾向が続いていた(図表4)ことを考えれば、奨学金の利用増加にもうなずけます。
【図表2】大学進学率
(出所)文部科学省「学校基本調査」
【図表3】大学学費(4年間)
(注)年間授業料×4+入学料で算出。
(出所)文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
【図表4】40~50代世帯の可処分所得 (2人以上勤労者世帯)
(出所)総務省「家計調査」