書籍『金利を見れば投資はうまくいく 日本編』を上梓した、債券のスペシャリスト堀井正孝氏は金利は金融市場の「炭鉱のカナリア」であり、「投資家にとって金利ほど力強い味方はいない」という。金利を通して見れば、景気を春夏秋冬のような“周期”でとらえることができ、より適切な状況把握と予測ができるためだ。
約20年、日本はほぼ金利のない世界が続き、また金利は分かりにくそうという先入観もあいまって、敬遠しがちな人も多い実態があるが、金利が動き始めた今、自身の投資判断をより良いものにするためにも金利へのさらなる理解が欠かせない。
そこで、堀井氏に金利を読む意味と、金利を通じて見る2025年の展望を聞いた。
金利は投資家にとって最高のパートナー
――堀井さんは1989年に生保で債券運用部門に配属となり、金利の世界に入られたとのこと。ご経験のなかで、金利の魅力を実感されたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
ファンドマネージャー(FM)なって数年たった頃、運用がうまくなりたい、そのために、債券、為替、株式などの市場を問わず、活躍しているFM、エコノミストやアナリストが、何を考えているのか知りたいと思い、彼らに会うため何度も海外に足を運びました。彼らに運用や分析のコツを尋ねると、全員に共通した答え、それが「金利を追うこと」でした。これが、間違いなく、金利の動きに注目するきっかけとなりました。
実は、新人FMの頃、債券運用部長の号令で行った、短期債から長期債への大幅なポートフォリオの変更が成功を収めたのですが、なぜ部長が号令を出せたのか、当時の私には分からなかったということがありました。
ところが、金利を追い始めたら、部長は、あの時の「長短金利差逆転=景気減速のサイン」を見逃さなかったのだと気づき、衝撃を受けました。
身近にあった金利、身近にいた部長……まさに「灯台下暗し」でした。金利の魅力を実感したのは、金利と部長の号令が結びついた瞬間だったかもしれません。
――経済・マーケットを読み解くための指標は多数あります。金利に着目する意義や、金利ならではの強みはどのようなものだとお考えでしょうか。
金利の強みとは、金利は経済の中心にあり、今の景気をリアルタイムで教えてくれる指標だということです。さらに、金利は、金融市場の「炭鉱のカナリア」であり、金利の変化は何らかの変調を知らせてくれるサインになります。
金利の変化を見逃していては、景気の変化にいち早く気づくことはできないでしょう。また、金利は、為替、株式、商品などのあらゆる市場に影響を与えるからこそ、誰もが金利に注目するのだと思います。
金利の見方にはちょっとしたコツが必要ですが、それさえ理解できれば、経済統計を読み解く知識は必要ありません。金利は、景気や各市場の先行きを考える上での最良のツールであり、投資家にとって最高のパートナーだと思います。