中国語、うまくなったね!
それから数か月後、理沙は万姫とビデオ通話で談笑していた。画面の向こうで笑う万姫は、相変わらずエネルギッシュだ。
「理沙さん、また中国語上手くなったね!」
「本当? ありがとう。李偉が特訓に付き合ってくれてるおかげかな」
実は万姫たちが帰国した後、理沙は本格的に中国語を勉強し直すことに決めたのだ。
そう思ったきっかけは、万姫たちを厳しく叱咤してしまったこと。もしもあのとき、もっと理沙の言語能力が高ければ、雰囲気を悪くせずに彼女たちの不適切な行動を注意することができたのではないかと考えたのだ。
「理沙さんの中国語比べたら、私の日本語まだまだ下手。息子の方が上達早い。悔しいね」
万姫は「まだまだ」だと肩をすくめるが、彼女の日本語の上達ぶりには目を見張るものがある。最初のころは通訳兼クッション役として同席してくれていた、李偉の助けも最近ではほとんど必要なくなってきている。
「あれ理沙、まだ姉さんと喋ってるの? 大丈夫? 疲れてない? 長電話が嫌になったら遠慮なく切ればいいからね」
「李偉! 今悪口言ったね! 私、分かるよ! 理沙さん、私と話してるのだから、あっち行って!」
わざわざ日本語で話しかけてきた李偉だったが、万姫は敏感に内容を察知したようだ。
思わぬ姉の反撃を食らい、苦笑しながら退散する李偉の姿を見て、理沙は思わず声を上げて笑った。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。