「トラブルというほど大げさなものではないのですが……」と恐縮しきりで話してくれたのは、都内の私立大学に事務職員として勤務する金子雄彦さん(仮名)です。金子さんは昨年11月に奥さんの晶子さんのお母さまが亡くなるまで、二世帯住宅で25年以上義両親と同居していました。自称「アニメ『サザエ』さんのマスオさん状態です」とおっしゃいますが、誠実そうな面差しや物言いは確かにちょっとマスオさんに似ているかもしれません。

そんな金子さんにとって長年ストレスになっていたのが義両親との経済的な価値観の違いでした。昭和一桁世代で、東京で過酷な戦争体験をした義両親は、外食やレジャーに振り向きもせず、何十年も前の服を着続ける節約家。義理のお父さまが亡くなった際には1億5000万円の相続が発生し、税理士に「一公務員が貯められる額とは思えない」と驚かれたそうです。金子さんに、そんな義両親との生活を振り返ってもらいました。

〈金子雄彦さんプロフィール〉

東京都在住
56歳
男性
大学職員
公務員の妻、社会人の長男と3人暮らし
金融資産8500万円(世帯)

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2024年の11月に二世帯住宅で同居していた妻の母親が亡くなりました。2025年には卒寿を迎える予定でした。急性心疾患だったこともあり義母は死の直前まで元気そのもので、前夜も息子の好きな煮込みを作って届けてくれたばかりでした。

「このまま100歳まで生きてくれると思っていたのに」と肩を落とす妻を横目に、私自身は、大変不謹慎ですが、大きな呪縛からようやく逃れたという解放感を味わっていました。