金利上昇は必ずしも株安を招くわけではない? 過去のデータから検証
株ですが、先ほど金利上昇で株が下がったということですけれども、NASDAQの過去1年を見ると、年間通しては上がっているのですが、右側の方で少し大きく株が下がっています。
それから日経平均株価も、過去1年を見ると今週は比較的下落幅が広がったということになります。
先週、金利がどう決まるかというお話をしましたが、今日は一旦寄り道をして、なぜ金利が上がると株が下がるのかという説明を挟んでおきたいと思います。
金利と株の関係ですが、基本的に金利上昇は株価の下落要因と考えられがちです。なぜかということですが、例えば1番や2番はなんとなく考えてみたらわかると思いますが、金利が上がると企業の利払い負担が増える、つまり企業収益を下押しするということになります。どちらかというとNASDAQの方が業歴が浅い企業が多く上場していますので、比較的間接金融、銀行借り入れが多かったりするケースもあるのですが、いずれにしても負債に対する利払い負担の増加というものが企業収益を下押しします。これが株安になります。
2番の金利が上がるということは、金融引き締め効果によって景気そのものが減速する、そもそも企業収益が圧迫されるのではないかということ。それから3番目、金利が上がると相対的に株というリスク資産と安全資産の国債を比べたときに、金利が高いほど、何もリスクを取って株に投資しなくてもいいのではないか、国債の魅力度が増すわけです。ですので、金利が上がると株ではなくて、リスクを取らずに安全資産の国債にお金が流れて、株が下がるという側面もあります。
そして4つ目は、実務上はあまり考えることはないのですが、株価を考えるときに配当割引モデルという考え方があります。これは株価は配当を割引率、金利で割ったもの、これが株価なんだという理論株価を考えるモデルがあります。金利が上がると、割り算の分母の数字が大きくなるので、全体として出てくる株価の数字は小さくなってしまいます。逆に金利が下がると、割り算をする分母の数字が小さくなるので、株価が上がるということもあります。ですから、いろいろな要因で金利上昇は株安というのが連想ゲームとして思い浮かびます。
ただし、そもそも金利が上がっているようなインフレの時というのは、経済そのものが調子が良いケースが多いわけです。景気が良いので物価が上がっている。それに対して中央銀行が金利を引き上げようとしている、こういうことなので、金利上昇というのは景気が良いことの裏返しでもあります。ですので、必ずしも金利上昇が株式相場の下落につながるわけではない、これが一番のポイントです。
実際に2000年、S&P500と米国の政策金利を見ると、金利の利上げ局面で株が下がっているかというと、全くそういうことはありません。例えば2004年以降、17回連続で利上げをしたとき、少しペースは鈍いですが、株は上がっています。それから2016年以降の利上げ局面でも株は上がっているということになります。なんとなくその日の相場の説明の中で、金利が上がって株が下がった、こういう言い方はよく出てくるのですが、長い目で見ると、そんなに金利が上がるから株が下がると考える必要はないのですが、ただ今週はやはり、先ほどからの話の通り、FOMCのスタンスが予想以上に少しタカ派に転じたので、マーケットも一旦驚いたということだと思います。