実質賃金の伸びが消費を下支え 日本の実質GDP成長率は1%程度に

――2025年の日本経済の見通しは?

25年の日本経済は、まずインフレが落ち着いていくにしたがって実質賃金の伸びがプラスで推移し、消費を下支えする。インバウンド需要や企業による旺盛な設備投資も景気を押し上げることから、実質GDP成長率は1%程度になると予想する。

日銀は現在、25年度後半にかけて「物価安定の目標」である消費者物価上昇率2%が持続的・安定的に実現するとの見通しに基づき、景気に中立的な政策金利までの利上げを実施中で、25年末までに政策金利を0.75%もしくは1%まで引き上げると見ている。

緩やかな金融政策で株価・景気は堅調も、トランプ政策次第で「不安定化」リスクも

――2025年のマーケット展望は?

FRBが緩慢な利下げを継続するもとで米国長期金利は緩やかに低下していき、米株価は堅調に推移するとみている。一方、日本株も緩やかな景気拡大のもとで堅調を維持する。日銀はゆっくり利上げを進め、日本の長期金利は緩やかな上昇傾向をたどる。この結果、ドル円相場は緩やかに上昇(円高)することが想定される。

リスクとしてはやはり、第2次トランプ政権の政策運営を指摘しておきたい。関税引き上げなどによって想定以上にインフレが発生するようなことになれば、米長期金利が不安定化したり、FRBが再利上げに踏み切らざるを得なくなるおそれもある。大幅減税などで財政がこれまで以上に悪化すれば、それも長期金利を上昇させ得る。その結果、米国の金融システムが不安定化したり、為替相場が乱高下するようなことになれば、日本の景気、市場、日銀の金融政策運営にも大きな影響を及ぼすことになる。

 

楽天証券経済研究所
チーフエコノミスト
愛宕 伸康氏

 

神戸大大学院経済学研究科修了後、1991年日本銀行に入行。政策委員会審議委員スタッフ、物価統計課長、日本経済研究センター主任研究員(チーフフォーキャスター、出向)、横浜国立大学派遣講師、人材開発課長などを歴任。岡三証券チーフエコノミスト、いちよし証券上席執行役員チーフエコノミストを経て、2023年10月より現職。東京財団政策研究所主席研究員なども兼任。著書に『日本経済 30の論点』(日本経済新聞出版、共著)等。