◆運用報酬の手数料を払い戻す日本株ファンド

11月15日に新規設定された、あおぞら投信の「あおぞら・日本株式アラインメント・ファンド」は、TOPIX(東証株価指数)をベンチマークとする国内株アクティブファンドだが、ファンドの運用成績がTOPIXを下回った場合は、運用担当者の運用報酬を払い戻すという仕組みを持っているユニークなファンドだ。国内でファンドを設定するあおぞら投信や販売会社等が取る年1.21%の信託報酬は発生する。

同ファンドの運用を実質的に行うのは英ロンドンに最大の運用拠点を置くオービス・インベストメント・マネジメント社だが、同社はTOPIXを上回った部分で得る成功報酬以外の報酬を求めない。通常の成功報酬型のファンドは、基準報酬があって、ベンチマークを上回った場合に成功報酬を追加で徴収する仕組みになっていることとの大きな違いだ。さらに、TOPIXを運用成績が下回った場合にはペナルティーとして得た報酬を払い戻す。具体的には、ファンドの運用成績がTOPIXを上回った場合には、超過分の38%が成功報酬として「フィー・リザーブ」にプールされる。反対にTOPIXを下回った場合は、そのマイナス分の38%を「フィー・リザーブ」からファンドに払い戻す仕組みになっている。オービス社は「フィー・リザーブ」に残っているフィーの3分の1を報酬として受け取る。「フィー・リザーブ」の資金がゼロの場合はオービス社の受け取る報酬はない。

オービス社の運用は、徹底した調査・分析によって、市場で過小評価されている銘柄を発掘し、確信がある限り、忍耐強く待ち続けるという投資スタイルだ。優れた分析者の投資アイデアを尊重し、投資判断で合議制をとるようなことをせず、個人の考えを重視した投資行動をとる。もちろん、より洗練された投資アイデアを磨くためにアナリスト同士の意見交換は積極的に行われている。そして、各アナリストが自信をもって提示する銘柄についてポートフォリオ・マネジャーは、リターン、リスクおよび流動性を考慮し、個人の投資判断により、最も確信度が高い銘柄へ厳選投資するポートフォリオを構築する。投資銘柄は30~50銘柄になる。

オービス社は優れた運用会社として自らの運用実績に自信があるからこそ、このような報酬体系にしたファンドを提供することにしたのだろうが、このような報酬体系でも運用を請け負えると考えられるほど、国内の株式市場に魅力があることの裏返しであるともいえる。国内投信市場の資金流出入では、確かに「外国株式型」に資金が流れ込み、「国内株式型」からは資金流出になっている。国内株ファンドの設定も決して多くはないが、そこに大きな可能性を見いだしている投資家がいることを覚えておきたい。

執筆/ライター・記者 徳永 浩