「50万円」の壁も見直し&撤廃の方向へ

③「50万円の壁」在職老齢年金の見直し

在職老齢年金とは、年金を受給しながら働く高齢者が対象の制度。収入と年金の合計が基準額を超えると厚生年金の一部または全部が支給されなくなる仕組みです。現在の基準額は月額50万円。この額を超えると、超えた分の半額が月の厚生年金から減額されます(基礎年金は減額されない)。例えば、10万円超えていたら5万円が支給停止となります。

この仕組みが働く高齢者の就業調整を招き、人手不足に拍車がかかるデメリットを解消するため制度の見直しが提案されています。具体的には、基準額の引き上げ(62万円、71万円)、制度の撤廃が挙がっています。

65歳以上の在職老齢年金受給者(約308万人)のうち支給停止になっている人は約16%(約50万人)で、約4500億円がカットされている状況です(2022年末 時点)。

支給停止の基準額を61万円に引き上げた場合、上述のうち約7%(約23万人)への1600億円、72万円に引き上げた場合は約10%(約30万人)への約2900億円分の支給停止が解消される計算です。

60代後半の就労率は約6割に上り、直近10年間で約11ポイント上昇しています(出所:総務省「労働力調査」2023年)。今後も増加の傾向が見込まれることから、見直しあるいは撤廃に向け前向きな判断が望まれます。

④標準報酬月額の上限引き上げ(厚生年金)

標準報酬月額とは、将来受け取る年金の計算の基準となる金額のことです。標準報酬月額は収入に応じて32の等級に分かれます(厚生年金の場合)。現在、厚生年金の標準報酬月額の上限は65万円。この上限額を引き上げることで、該当する人には将来の年金が増えることが期待されますが、支払う保険料負担も増えることになります。

これらの改正案についてですが、状況は随時変わっていくので定期的な情報収集を欠かさないようにすることをおすすめします。