株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町の甘味処で抹茶を飲みながら投資談義を行っています。
T:最近、物価高で食料品の値上げが相次ぎ、食費が家計を圧迫しているとの報道が目につきます。エンゲル係数も上がっているようですね。2人以上の家庭で30%まで上昇しているとの報道もありますよ。
神様:そのようですね。エンゲル係数とは、消費支出に占める食料費の割合のことを言いますが、一般的にはエンゲル係数が低いほど生活水準が高いとされています。
T:生きていくために食費は欠かせません。食費の割合が低いほど、食費以外によりお金を使っているということですから、豊かな生活を送っている、と言えるのでしょうね。
神様:単純にそうとは言えないかもしれません。例えば食費が高くても外食が多い、お惣菜など少々高くても出来上がったものを購入している、なども考えられます。また、購入手段も多様化しています。近所のスーパーに買いに行くだけでなく、ショッピングモールでの大量買いやネットスーパーなどの利用もあるでしょう。
T:なるほど、確かに日本で食に困ることはまずないですからね。生活はすでに豊かであり、利便性などを求めて高いものを買っていることもありそうです。しかし、それでも今は物価高の影響も大きいとは思います。
神様:高い水準の賃上げが実現しても、物価高を背景に実質賃金は減少しています。厚労省の発表によれば、事業所規模5人以上の企業において、8月9月と実質賃金は2カ月連続で前年比マイナスです。政府は11月中にもまとめる経済対策について閣議決定の後、11月28日から始まる臨時国会で審議し成立を目指します。実質賃金を上げる施策が求められます。
T:しっかりとした経済対策に期待したいところですね。
神様:さて、今日はネットスーパーについてお話しましょう。インターネット上で商品を選び、購入し、自宅まで宅配で届けてくれるネットスーパーは、コロナ禍を機に急拡大しました。その後も各企業が参入し、現在に至っています。
T:アフターコロナで経済活動も回復し、外出自粛のない日常生活が戻った後もネットスーパーが利用されるのはなぜでしょうか?
神様:背景にある社会情勢の変化としてまず挙げられるのは、共働き世帯の増加です。共働き世帯は1980年では614万世帯でしたが、2022年には1,262万世帯と約2倍に増加しています。専業主婦が減少し、夫婦で家事を分担することが当然となっている中、効率よく買い物ができるネットスーパーに注目が集まっているようです。
T:確かに、共働き世帯や小さい子供がいる世帯だけでなく、高齢者のみの世帯でも重いものを自宅まで配送してくれるのは時短や負担減少になりますし、便利ですね。ただ、送料もかかりますし、値段も実店舗と比較してどうか、というのは気になるところです。
神様:おっしゃる通りです。ネットスーパーを利用する場合の気になる点として、送料、値段、食材の鮮度が上位に挙がっており、利用を躊躇する要因となっているようです。ネットスーパーでは顧客ごとに商品を選び、自宅まで配送するので店舗販売よりもコストがかかるのが実情です。生鮮食品を購入する場合は、受け取りまで時間を要することもあるでしょう。その場合は鮮度も心配です。
T:それでも利用されるということは、それだけ良いサービスが台頭しているということですね。「Uber Eats」のような食事の宅配も今は定着しています。その裏には企業努力があるのでしょうね。
神様:商品の配送時間をできる限り短くすることや配送中の徹底した温度管理など、技術の進歩や工夫が見られます。また、ネットスーパー専用の物流センターの整備をする企業もあります。実店舗も運営しているスーパーでは、セルフレジ導入による余剰人員をネットスーパーに活用する例もあるようです。今後、小売業DXの進展、ドローンによる個別配送など技術の進歩や利用者の増加によって価格面のデメリットが緩和される可能性もあるでしょう。ネットスーパーに関連する企業が活躍する場は多岐にわたります。
T:目に見えている実情を見ると、物価高に圧迫される家計ばかりが気になりますが、こうして社会情勢の変化、小売業の変化などもみるとまた違った見方ができます。投資にとっては、未来を見ることも大事ですね。