株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。

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T:11月5日に投開票された米国大統領選挙は、共和党候補のトランプ前大統領が勝利した結果となりました。その後は日米で株高が続いていますね。

神様:米株については、実は大統領選挙後に株価が高くなるのはアノマリー(経験則)として有名です。大統領選挙を巡る不透明感の後退や新大統領による景気刺激策への期待が背景にあるようです。過去20回の大統領選挙において、各年の10月末から12月末のS&P500種株価指数の騰落をみると、上昇が15回で下落が5回、平均騰落率は+2.8%でした。また、翌年の騰落も上昇が多く、翌年まで株高が期待できるかもしれません。トランプ次期大統領の政策によって米国の個人消費が刺激され、米景気が上向けば日本経済にも好影響をもたらします。今後の動向に注目しましょう。

T:日本では11月11日、第2次石破内閣が発足しました。こちらも年末、そして来年に向けて消費が刺激されるような政策を期待したいところですね。

神様:さて、今日はこれまでとは少し趣向を変えて「化粧品市場」に注目してみましょう。Tさんは世界の化粧品市場上位3カ国はどこかわかりますか?

T:いえ、ちょっとわかりません。

神様:経済産業省の資料によると、世界の化粧品市場規模は2019年で約46.5兆円でした。日本の化粧品市場は同年で約3.8兆円。米国、中国に続く第3位の規模となっています。

T:つまり、米国、中国、日本が3大市場ということですね。

神様:化粧品の一人当たりの消費額は一人当たりの名目GDPと非常に高い相関があると言われています。つまり、化粧品市場は一人当たりのGDPが成長すれば、確実に大きくなる市場であると言えます。今後の日本を考えると、少子化で化粧品市場も縮小していくのではないかと思うかもしれません。しかし、少子化の影響を相殺するほど一人当たりのGDPが成長すれば、国内市場が維持されるとも言えます。

 

T:なるほど。そういう市場もあるのですね。

神様:足元を見ると、国内化粧品市場はコロナ禍で減少し、現在は回復途上にありますが、足取りは鈍い状況です。コロナ禍以降での顧客の購買行動の変化もポイントとなるでしょう。今後のさらなる回復を実現できるかが注目されます。

T:市場の活性化が求められますね。

神様:現在その市場の活性化の役割を担っているのが、韓国で誕生した化粧品、つまり「韓国コスメ」です。

T:韓国コスメですか。最近よく目にしますが若い女性を中心に人気があるようですね。

神様:2023年の国内における韓国コスメの消費額は、前年比で37.3%増となる313億円でした。化粧品市場全体に占める割合は高くはありませんが、ベースメイク分野では6%のシェアを占めるようになっています。日本輸入化粧品協会によれば、2023年の化粧品輸入額(ハミガキ、石鹸等を除く)は前年比で13.6%増となる3,770億円で、国別では韓国が959億円でトップとなりました。

 

T:そもそも、なぜ韓国コスメはそんなに人気なのでしょうか?

神様:人気の一つの要因は価格帯にあると考えられます。高額な百貨店や、安価な100円均一ショップにはない”中間価格帯”の商品としての需要をつかんでいます。日本ではなじみのない成分を用いて美を追求し、独自色を打ち出している点も要因のようです。最近は新たな輸出主力産業として、韓国政府も支援に力を入れており、さらなる躍進が期待されます。国内企業も韓国の現地コスメメーカーと契約して独占輸入販売するなど、今後もドラッグストア、コンビニエンスストアでの販売やECなどを通して拡大していくことが見込まれます。

T:国内化粧品メーカーにとっては競争が激しくなるわけですから、この刺激をきっかけにして飛躍してほしいですね。

神様:日本の化粧品メーカーの強みは品質と言われていますが、輸出面ではアジア圏市場での競争が激化しています。今が正念場です。メーカー各社の奮起に期待しましょう。