いつか訪れるのに、ついつい話し合いを先延ばしにしまいがちな「相続」。相続問題に詳しい弁護士の古山隼也氏は「相続には予想外のトラブルがつきもの」といいます。相続をきっかけに家族がバラバラになる「争族」にならないためにも、今回は相続に関するよくある疑問を、Q&A形式で古山氏に解説してもらいます。(全4回の4回目)
●第3回:認知症への備えとして注目度が高まる「家族信託」。弁護士が仕組みを解説
※本稿は、古山隼也著『弁護士だからわかる!できる! あんしん相続 手続きの「めんどくさい」「わからない」「ストレス」が消える!』(Gakken)の一部を抜粋・再編集したものです。
相続のマイナス財産、債権者からの請求を拒否したい
Q, 姉から「相続分を放棄して」と言われました。これは相続放棄のことですか?
A. 「相続放棄」と「相続分の放棄」は別物です。
相続放棄とは
はじめから相続人でないことになります(民法939条)。
相続放棄をするには、家庭裁判所での手続きが必要です(民法938条)。
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も何も受け継ぎません。債権者からの請求も拒否できます。
放棄した相続分は他の相続人に分けられます。
相続分の放棄とは
相続分の放棄とは、自分の相続分を放棄することです。
放棄された相続分は、他の相続人に相続割合に応じて分配されます(したがって、他の相続人の相続分の変動が相続放棄と異なるケースが生じます)。決まった方式や熟慮期間のような期間制限はありません。
相続放棄と違うのは、家庭裁判所での申述が不要なことと、相続人の地位が維持されたままであることです。