債券の動きも興味深い。下記は11月5日~13日までの世界主要国債利回りの変化幅をまとめたものですが、全部バラバラです。

 

アメリカでは10年、5年の金利が上がり、日本の10年金利もアメリカに連動して上がった。しかし、ドイツの10年金利と英国の10年金利は下がっています。つまり、ヨーロッパでは債券が買われているということです。

先ほどの話にも絡めると、ドイツとイギリスでは株式は売られ債券は買われていることになります。ですからヨーロッパはおそらく景気が悪くなるシフトを敷いているのではないでしょうか。

一方日本では、円安が起こっています。おそらく金利の上昇圧力、インフレ圧力の増加が原因であると予測されています。その結果、長期金利も上がり、日本銀行も利上げが催促されている。

金利が上がると株は思うように上がりません。日本は決してヨーロッパのように景気が悪いわけではない。しかし、金利でブレーキがかかっている。

株価、通貨、金利の動きを見てきました。この三つの動きを重ね合わせて、ヨーロッパの今を分析してみましょう。結論から言うと、ヨーロッパはトランプシフトを「吉」ととらえている可能性があります。

ヨーロッパは今、景気が悪くなっている。これはZEW(欧州経済研究センター)などの景況感指数にも表れています。その中で、金利を下げようという思惑もあったことでしょう。実際にECB(欧州中央銀行)は利下げをしています。ですから、自分たちで望んで株売りの債券買いの状況に持ち込んでいると言えるのではないでしょうか。

なおかつ、ヨーロッパではユーロが安くなっています。これも「吉」です。ユーロを安くして、輸出競争力を増やし、もう一度ヨーロッパの景気をよくしようと考えている。

欧州はしたたかです。今のトランプシフトは一見ピンチですが、ピンチをチャンスに変えようと動いている。そんな姿が見えるように思います。

逆に日本はどうか。金利が下がっている、あるいは上がっていないなら、意図的に円安を引き込み、円安の力で利益を上げ、景気を良くしようとしている動きだ。前向きに考えるなら、そう理解できます。

しかし、実態は違うでしょう。ヨーロッパと比較した場合、日本の置かれた状況は「インフレに対して過敏に反応している」と言えるのではないかと思います。

インフレを恐れているから長期金利が上がる。本来は利上げをしたくないのに、中央銀行が利上げに追い込まれる。景気はそれほど悪くはないのに株価が上がってこない。そんな状況になっている。

ヨーロッパは景気が悪いと認識し巧みに立ち回っているのに対し、日本はどっちつかずで為替に振らされている。袋小路に追い込まれてしまっているのではないか。そんな印象が否めない1週間でした。