NISAの潜在顧客2000万人を取り込む戦略とは

――新NISAは2年目を迎えます。今後の展望をお聞かせください。

まず、「Slim」のコンセプトは普遍的なものだと考えており、今の戦略を愚直に続けていくというのが基本です。

ただ、中長期的な視点に立つと、別の戦略が必要だと考えています。NISAの口座数は、今年6月時点で約2400万件でした。私たちは、2030年頃には4000万件程度になると予想しています。イギリスのISA(個人貯蓄口座)※3は国民の4割に浸透しているので、日本でも4割まで拡大すると、控えめに見積もっても4000万人くらいになるというのが仮説です。とすると、今後さらに2000万人くらいがNISAを始める可能性があります。そして、私はこれからNISAを始める方というのは、すでにNISAを利用している投資家層とは違ってくると考えています。

※3 日本のNISA制度のモデルにもなっている、イギリスの少額投資非課税制度。

――どのような違いがあるのでしょうか。

現在NISAを使っている約2000万人の方々は、自発的にコストなどの商品性を比較して、商品を理解した上で買っている人たちが多数でした。一方、これから始める人は、「NISAという商品に投資する」というような、ライトユーザー層が多くなってくるのではないでしょうか。

そういう投資家の方に、はたしてオール・カントリーやS&P500はこれまでと同等の競争力を保てるのか、という疑問が出てくると思います。その問題への対応の1つが、9月に新規設定したPayPay証券とのコラボ商品であり、PayPay証券専売である「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」です。この1本でリスクを抑えながら、適切な分散投資ができるバランスファンドで、これからNISAを始める人がファンド選びで悩まないようにすることを狙った、「Slim」の“戦略的補完”といえる商品です。

――2009年からの歴史においても、ブランドコラボは初でしたね。今後、こうした新しいコラボ商品が提供される可能性はあるのでしょうか。

はい。いま考えているのは、中身は同じファンドであっても、販売会社ごとにファンドの「愛称」を変えていくというものです。販売会社には、それぞれのプロダクトのラインアップがあります。各社のラインアップのコンセプトに合うような愛称をファンドに付けることができれば、より親しみやすくなると思っています。

これからの2000万人の方々は、ネットでの情報提供やキャンペーンだけでは、なかなか動いてはくれないでしょう。その層を動かすには、オンラインだけではないマルチな戦略が不可欠であり、対面チャネルも含めた販売会社の方々との連携も非常に重要になります。実現にはいろいろな調整が必要になりますが、販売会社ごとに、扱いやすいように愛称を変えてもらって、2000万人を動かす第一歩にしたいですね。