――さて、話を投資信託に移していきたいと思います。松井証券といえば、日本株のイメージが強い印象を受けます。そのなかで近年、「収益源の多様化」を掲げていますが、多角化を進めるなかで投資信託の位置づけは、どのようなものでしょうか。

種田真二氏(以下、種田) 私たちが投資信託ビジネスに参入したのは2016年ですから、かなり後発でした。それまでは日本株ビジネスに注力していましたが、15年前、20年前に比べて、日本株以外から投資を始める人が増えていると感じています。

松井証券の投資信託サービスでは、最低100円から購入できますし、購入手数料もかからないので、投資の入門版として親しみやすく感じてもらっていると思います。今年1月から開始した新NISAのスタートもきっかけになり、投資を始める方が急増しました。特に投資信託の積み立てによる資産形成を始められるお客さまは、最初の預かり資産は小さいかもしれませんが、長いお付き合いをさせていただくことになりますから、当社の将来にとっては非常に重要になります。

NISAによる資産形成の大切さは、昨年からメディアでも積極的に取り上げられるようになって、先述の通り、口座数も伸びています。ただ、投資を行っていない人が世間ではまだまだ大多数を占めています。今は第1段階目で、これからさらに投資を始める方が増えていくでしょうから、投資信託を投資の入り口として、資産形成に対する興味を高めていただけるようなサービス開発、情報提供などに注力していきたいと思います。

マーケティング部副部長 種田真二氏

――現状、インターネット証券会社は口座数※2で見ると、SBI証券、楽天証券が2強です。そんななか、松井証券の強みや独自性はどこにありますか。

種田 意思決定のスピードです。他の大手インターネット証券会社は何かしらのグループに属し、どうしても親会社の意向が絡んできますから、判断を下すまでのプロセスが煩雑になりがちです。

この点、我々はいわゆる“独立系”の証券会社なので、承認プロセスが極めてシンプルです。その結果、他の会社に先立って、新しいサービスや商品を打ち出すことができます。

たとえば昨年(2023年)11月に、業界最高の還元率を誇る「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス ※3」を開始した時も、検討からサービス発表まで短期間に行い、サービスを開始しました。

また、同じ時期に、NISA口座における米国株式の取引手数料無料化を他社に先駆けて発表しました。

近年ではポイント付与によってお客さまを囲い込み、“経済圏”を形成する動きもありますが、大事なのは口座の稼働率です。新規口座を獲得しても、取引してもらえないのでは何の意味もありません。その点で問われるのは、「お客さまが投資を続けてくださるサービスや取引環境を提供すること」だと考えています。

また、投資信託を販売してもなかなか収益化できないという声もありますが、それはお取引いただくための入り口であり、重要なのは長期で考えていくことです。それこそ日本株、米国株、FXなどさまざまな取引商品がそろっていますので、投資信託で資産形成に関心を持っていただき、その次の段階で他の投資商品にも目を向けていただければと考えています。

今後も松井証券に口座を開いてみようと思ってくださるお客さまを増やすため、松井証券ならではの利便性を一段と高めるサービスなどを提供していきますので、ご期待いただければと思います。
 

※2 2024年6月時点口座数で見るとSBI証券(SBIネオトレード証券、FOLIOを含む)は1293万6000口座、楽天証券は1133万口座、3番手であるマネックス証券は262万7000口座であるなか、松井証券は157万4000口座である(千未満は切り捨て/各社の公表資料より)。

※3 「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」は、低コストのインデックス投信からアクティブ投信まで、全ての銘柄で業界最高の還元率で松井証券ポイントが貯まるサービス。松井証券で投資信託を保有し、毎月エントリーをするだけで年間最大1%のポイントが貯まる。