金融知識に自信がある人は1割強にとどまる

税金、社会保障制度、年金など、生活に不可欠な金融知識に自信がある人はわずか1割強。2022年7月に公表されたJ-FLECの調査で明らかになった結果だ。J-FLECの安藤聡理事長は「調査では『金融経済教育を受けた』と認識している人が7.1%。さらに『金融知識に関して自信がある』と答えた人は1割強にとどまる。年齢別、地域別にも正答率に差があることから、日本では金融経済教育が絶対的に不足しているのではないか。こうした課題認識のもとに4月にJ-FLECが官民一体の組織として発足した」とJ-FLEC誕生の経緯を説明。

さらに米国では、金融経済教育を受けたという人が約20%もいることに言及。自身の駐在経験を引き合いに、米国では家族のみならず友人や同僚ともお金の話をオープンにする環境がある一方、日本はその逆で、周囲とお金の話をすることははばかられる風潮にあると指摘した。

その現状を打破するために必要とされるのが金融経済教育の普及だ。J-FLECでは年齢層別に必要な金融リテラシー(お金に関する知識・判断力)に関する資料を公表しており、個人では各自で金融リテラシーのチェックに活用できるほか、企業では効果的な従業員教育のための参考教材として活用できる内容となっているという。

講師派遣やセミナー開催で地域や学校を通じて幅広い世代への働きかけが進む一方、企業の従業員、いわゆる職域への金融経済教育も欠かせない。企業における従業員の金融リテラシー向上の意義について、三井住友フィナンシャルグループ伊藤文彦取締役 執行役専務は「従業員に対しての金融経済教育をしっかり提供することが企業へのエンゲージメントやモチベーションの向上につながる」と語った。

企業戦略として重視されつつある人的資本経営に触れた安藤理事長は、「経営者は人的資本経営を推進しなければ従業員のモチベーション向上、その結果として企業価値を高めることはできない」とコメント。従業員が求める企業研修についてのアンケート結果では、DXと資産形成が挙げられたとして、「投資のための勉強というより、税金など生活上必要な知識が不足していて生活上、若干不安があるということで、やはり金融経済教育の機会提供が一つのテーマ。小学生、中学生、高校生には学習指導要領に金融経済教育が盛り込まれており、すでにスタートしている。こうした世代が社会人になっていけばますます社会は豊かになっていくのではないか」と期待。一方で約7%しか金融経済教育を受けていないとの現状に、「全世代の方に教育の場を提供していくことが使命」と力を込めた。

会場ではスマホを利用した金融リテラシーに関するクイズが行われるなど、参加型のコミュニケーションを促す工夫が凝らされていた。