セゾン投信社長の園部鷹博氏は1975年生まれの49歳。いわゆる“団塊ジュニア”で、就職氷河期世代にもあたります。厳しい雇用状況のなか、希望する職に就けずに、不安定な仕事に従事せざるをえなかった人も少なからずいます。そして、こうした背景から老後に向けた資産形成が十分にできていない人も……。
園部氏は50代に差しかかる同世代に、これから資産形成を始めても遅くないと伝えるため、書籍『50歳・資金ゼロから始める老後を幸せにする資産運用』を執筆。今回は本書から特別に、50歳から資産を増やすための知っておきたい公的年金の仕組みや具体的な投資手法をお届けします。(全4回の4回目)
●第3回:株価の大暴落時こそ見直される公的年金の安心感…「ねんきん定期便」のチェックすべきポイントを解説
※本稿は、園部鷹博著『50歳・資金ゼロから始める老後を幸せにする資産運用』(ビジネス社)の一部を抜粋・再編集したものです。
成長投資枠とつみたて投資枠をどう使い分けるか
NISAには2つの投資枠があります。「成長投資枠」と「つみたて投資枠」です。
投資額の上限は、成長投資枠が年間240万円まで、つみたて投資枠が年間120万円です。それぞれをフルに活用すれば、年間360万円まで投資でき、同じ金額を毎年積み上げていくと、5年後には1800万円の非課税保有限度額(総枠)いっぱいまで投資できます。
ある程度、投資のキャリアを持っていて、投資信託以外の商品にも分散したいという人は、成長投資枠とつみたて投資枠を使い分けてもいいでしょう。
つみたて投資枠は、購入できる商品が投資信託のみです。しかも、その投資信託も現在、運用されているすべてのものが買えるわけではありません。購入できるのは指定インデックス投資信託が227本、アクティブ運用投資信託等(指定インデックス投資信託以外の投資信託)が47本、そしてETFが8本の計282本(2024年2月29日時点)だけです。
これに対して成長投資枠は、投資信託だけでなく上場株式や上場不動産投資信託、そしてもちろんETFにも投資できます。投資信託も何でも買えるわけではありませんが、それでもつみたて投資枠を通じて買える投資信託の本数をはるかに上回る2000本程度の投資信託を買うことができます。
もし使い分けるのであれば、成長投資枠で株式を買い付けるのと同時に、つみたて投資枠で世界中の株式や債券に分散投資するタイプの投資信託を積立購入していくという手法があります。特に成長投資枠で日本株のポートフォリオを持つのであれば、そのリスクを軽減させるという狙いから、つみたて投資枠で世界中の株式や債券に分散投資するタイプの投資信託を買っていくのです。
ただし、投資する商品が増えれば増えるほど、管理は大変になります。個別銘柄にも投資するとなると、日々株価の値動きをチェックする必要があります。また株価が急騰、急落した時などは、なぜそのような値動きになったのかを自分が納得できるところまで調べる必要があります。これまで資産運用の経験がない人にとって、ハードルが高すぎるでしょう。
それならば、つみたて投資枠をフル活用して、1800万円の限度額いっぱいまで積み立てていくという手法もあります。
成長投資枠は、NISAの限度額である1800万円のうち、1200万円までしか使えません。しかし、つみたて投資枠は特に制限が設けられていないため、1800万円までつみたて投資枠で購入できる投資信託を積み立てていけるのです。
前述したように、成長投資枠は現物株式のほかに、投資信託も2000本近く対象になっています。ところが、つみたて投資枠は282本の投資信託のみです。「選択肢が少ないじゃないか」と言う人もいるでしょう。でも、どうやって2000本もの投資信託から、自分が投資したいものを選べるでしょうか。正直、これは無理だと思います。恐らく対象となっている282本から選ぶのも一苦労ではないでしょうか。
実は、選択肢の数が増えれば増えるほど、選ぶ側は選べなくなるというジレンマがあります。それなら、ある程度、対象が絞り込まれている282本の投資信託から選んだほうが、特に資産運用の初心者にとっては選びやすいと思います。