たくさんの投資信託を買う必要はない

資産運用をする時には、ポートフォリオを組むようにしましょうなどと、資産運用の初心者向けの本などに必ず書かれています。それは株式や債券などの個別銘柄で運用する場合の話です。投資信託の場合、複数の投資信託でポートフォリオを組もうとすると、かえって話がややこしくなります。

たとえば以前、このような人がいました。その人はインデックスファンドでポートフォリオを組んでいて、何を組み合わせているのかというと、米国のS&P500、オール・カントリー、そしてNSADAQ100の3つの指数に連動するインデックスファンドに均等投資していました。

確かに3つの投資信託に分散されているので、ポートフォリオ運用しているような気にはなると思うのですが、よく考えてみると、米国の株式市場への投資比率が異様に高くなります。

そもそもS&P500とNASDAQ100は米国の株価インデックスです。オール・カントリーは確かに世界中の株式市場に分散投資するポートフォリオを前提に運用されています。これは世界の株式市場の時価総額ベースで組入比率を決めているため、オール・カントリーと言いつつも、組入比率の60%は米国株で占められています。これでは分散が効いたポートフォリオとは言えません。

極端な話ですが、私は投資信託なら1本で十分だと考えています。ただし、世界中の株式市場や債券市場に分散したポートフォリオを持っている投資信託であることが条件です。そうすれば時々、運用成績をチェックするにしても、1本の投資信託だけを見ればいいので手間がかかりません。損をしているのか利益が生じているのか、利益が生じているとしたら、購入してからどのくらいの利益が得られているのかなどが、簡単にわかります。

要するに、自分が持っている資産の管理がしやすくなるのです。ただし、1本の投資信託だけで運用する場合、注意しなければならない点があります。

それは運用の継続性です。投資信託は「繰り上げ償還」といって、資金流出に歯止めが掛からず、純資産総額が極端に小さくなると、これ以上の運用継続は困難とみなされて、償還されてしまうケースがあるのです。

特にアクティブ運用をする投資信託で長期積立投資をする場合、この点が重要になってきます。インデックス運用の投資信託は、同じ株価インデックスに連動する投資信託が複数、運用されています。自分が積み立てている投資信託が繰り上げ償還になったとしても、同じ株価インデックスに連動する、他のインデックス運用投資信託で引き続き積立購入していけばいいのです。ところがアクティブ運用投資信託の場合、繰り上げ償還されてしまうと、まったく同じ運用を行っている投資信託が基本的に存在しません。結果、運用の継続性が断たれてしまうのです。

つみたて投資枠の対象になっている47本のアクティブ運用投資信託は、対象に入れられる際に、運用が開始されてから5年以上が経過していることに加え、これまでの運用期間中、資金流入超の回数が3分の2以上であることといった条件が課せられています。基本的に資金流出の著しい投資信託は、そもそも対象に含まれていませんが、将来的にどうなるかは誰にもわかりません。

したがってアクティブ運用投資信託を用いて、つみたて投資枠の運用を行う際には、しっかり資金流入の続いているものを選ぶようにしてください。

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