セゾン投信社長の園部鷹博氏は1975年生まれの49歳。いわゆる“団塊ジュニア”で、就職氷河期世代にもあたります。厳しい雇用状況のなか、希望する職に就けずに、不安定な仕事に従事せざるをえなかった人も少なからずいます。そして、こうした背景から老後に向けた資産形成が十分にできていない人も……。

園部氏は50代に差しかかる同世代に、これから資産形成を始めても遅くないと伝えるため、書籍『50歳・資金ゼロから始める老後を幸せにする資産運用』を執筆。今回は本書から特別に、50歳から資産を増やすための知っておきたい公的年金の仕組みや具体的な投資手法をお届けします。(全4回の3回目)

●第2回:意外と多い50代で金融資産ゼロ⁉ まだ間に合う資産形成のラストスパートのかけかた

※本稿は、園部鷹博著『50歳・資金ゼロから始める老後を幸せにする資産運用』(ビジネス社)の一部を抜粋・再編集したものです。

老後の生活を支える公的年金

超高齢社会と人口減少によって、その財政基盤が厳しくなってきているとはいえ、日本は他の国に比べると、公的支援制度がまだまだ充実しています。

日本の医療保険は国民皆保険制度なので、健康保険料を払っていれば、義務教育就学後から満69歳までは、かかった医療費の3割負担で済みます。そして前期高齢者に該当する満70歳から満74歳までは2割負担、満75歳以上の後期高齢者だと1割負担になります。ただし前期高齢者、後期高齢者とも現役並みの所得がある人は、3割負担になります。

このように、かかった医療費に対して最大3割の自己負担で済むのは、日本の公的医療保険制度がしっかりしているからです。ちなみに米国の公的医療制度は、65歳以上の高齢者と障碍者などを対象とする「メディケア」と、低所得者を対象とする「メディケイド」のみです。この2つの公的医療保険でカバーされない現役世代は、民間の医療保険でカバーする形になります。

日本で民間の保険会社が提供しているがん保険は、がんになった時に経済的な負担を手厚くカバーしてくれるメリットがあります。ただし個人的には、必要最低限の範囲でいいと考えます。公的医療保険が充実しているのに加え、高額療養費制度も併せれば、がんの入院治療にかかる医療費の大部分をカバーできるからです。したがって民間の保険に加入するに際しては、公的医療保険がどこまで保障の範囲なのかを把握したうえで、必要最低限のところを民間の保険でカバーするのが、もっとも賢い方法だと思います。

それと同じことは年金にも当てはまります。まず自分が加入している公的年金で、毎年の生活費がどこまでカバーされるのかを把握してください。そのうえで、もっと生活費がかかるという人は、公的年金では保障し切れない分を、資産形成によって補っていけばいいのです。

公的年金は、老後の生活の基盤を支えてくれます。たとえ株価が大暴落したとしても、あるいは大恐慌クラスの不景気が襲ってきたとしても、公的年金は淡々と支払われ続けます。これ以上に安定したキャッシュフローはありませんから、まずは公的年金がどういう仕組みなのかも含めて、全体像を把握するようにしましょう。