現役世代1.4人で1人の高齢者を支える時代に

65歳以上の人口が3887万8000人であるのに対し、生産年齢人口は5540万2000人です。高齢者が増える一方で、生産年齢人口が大幅に減少していることがわかります。結果として現役世代1.4人で1人の高齢者を支えなければならなくなるのです。

これが何を意味するのか。
15歳以上64歳までの現役世代にとっては、社会保障関係費負担が増大するということです。

社会保障には国民年金や厚生年金などの公的年金や医療、介護、生活保護、雇用、労災などさまざまなものが含まれます。このうち大きな部分を占めるのが公的年金と医療です。これらを賄うために、現役世代は年金や医療保険などの各種保険料を納めているのです。

日本の社会保障制度は、原則として現役世代が高齢者を支える仕組みになっています。そのため高齢者人口が増える一方で、現役世代の人口が減っていくと、当然のことながら現役世代の社会保障費負担は、どんどん重くなっていきます。

「可処分所得」という言葉をご存じでしょうか。お給料から税金、各種社会保険料など必ず国に納めなければならないお金を差し引いた残金のことです。自由に使えるお金という意味で、可処分所得と言います。

現役世代の社会保障費負担が重くなれば、可処分所得は増えにくくなります。実際、税・社会保険料負担率を見ると、1988年まで20.8%だったのに、2023年は28.5%まで上昇しています。つまり、その裏返しとして可処分所得が伸びないことを意味します。

可処分所得を名目値と、インフレを加味した実質値で見ると、日本人の生活が苦しい状況にあるのがわかります。名目値は金額ベースで把握されているため、物価が上昇すれば、可処分所得は増えていきます。

 

実際、2010年からの推移を見ると、名目の可処分所得は増えているのに、インフレを加味した実質ベースの可処分所得は大きく減少傾向をたどっています。ここ直近は、インフレの影響で実質可処分所得が減少していましたが、中長期的には、これに社会保障費負担増が加わり、可処分所得の伸びが大きく落ち込むことも想定されます。

つまり、給料を主な収入源としている現役世代にとって実際に使えるお金が増えず、個人消費が盛り上がらなくなる可能性があります。一方、現時点で50歳の人は2050年時点で75歳ですから、年金を受給する年齢に達しているものと思われます。

しかし、年金を受け取れる年齢に達しているからといって、今の50代の老後が安泰とは言えません。年金財政が破綻することはないにしても、年金制度を破綻させないために、年金支給額が減額される恐れがあるからです。

しばしば「年金は破綻しないから安心していい」などという意見もあります。もし支給額が大幅に減らされることになれば、確かに年金財政は破綻しないかもしれません。しかし年金を受け取って生活する高齢者の家計は、極めて苦しいものになるでしょう。だからこそ2050年の後期高齢者、今のうちから資産形成を行う必要があるのです

●第2回は【意外と多い50代で金融資産ゼロ⁉ まだ間に合う資産形成のラストスパートのかけかた】です(8月27日に配信予定)。

50歳・資金ゼロから始める老後を幸せにする資産運用

 

著書 園部鷹博

出版社 ビジネス社

定価 1,650円(税込)