DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセット・ブレインズの標氏に解説していただきます。

※この記事は、2024年7月25日(木)に実施したWEBセミナー「最新DC 投信マーケット解説 2024年7月号」を記事化したものです。

――2024年4月~6月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。

まず、図1のグラフをご覧ください。こちらは過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。

図1 分類別累積パフォーマンス 拡大図表示

出所:三菱アセット・ブレインズ

過去2年間で最もパフォーマンスが良かったのは、緑色の外国株式となりました。
この2年間おおむね堅調に推移してきましたが、直近ではハイテク株を中心とした米国株式の上昇、円安の進行が評価額にプラスとなりました。

国内株式は、日経平均株価が史上最高値を更新、4万円超で推移するなど好調でした。

他方、国内債券、国内リートのパフォーマンスはマイナス圏に沈んでいます。日銀はマイナス金利を解除するなど金融政策正常化へ向けた歩みを進めており、金利上昇圧力が高まっています。

足元では債券市場参加者会合が開かれるなど、国債買い入れ減額の見通しがさらに強まっており、今月末に予定されている日銀金融政策決定会合でどのような動きがあるか注目が集まります。

金利上昇が債券価格の下落につながる国内債券に加え、国内リートでは物件借り入れコストの上昇や分配金利回りの相対的な魅力度低下により、厳しいパフォーマンスとなっています。

次に分類別に直近3カ月のパフォーマンスランキング(図2)を確認します。

図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示

出所:三菱アセット・ブレインズ

2024年4月にパフォーマンスが最も良かったのはエマージング株式でした。中国当局による財政出動・インフラ投資などの景気刺激策が好感され、中国株式が特に堅調でした。

一方、国内株式のリターンは最も小さくなりました。それまで市場をけん引していた半導体関連株が売られ、株価を押し下げました。

5月は、外国株式が1位となりました。米国のインフレ鈍化により、米FRBによる早期利下げ観測が高まり、上昇しました。6月も外国株式を始め、海外の幅広い資産が上昇しました。米長期金利の低下やインフレ率の鈍化が好感され、米国のS&P500、ナスダック総合は過去最高値を更新しました。エマージング株式でも台湾を中心に、ハイテク株主導の株高が続きました。外国為替市場で円安が進行したことも、外貨建て資産のリターンにプラスとなりました。

この間、国内リートのリターンは前述のとおり低調で、厳しい状況が継続しました。

以上のとおり、特に5月~6月にかけて米国のインフレ鈍化や長期金利の低下が好感されるとともに、円安の進行もあり、外国株式やエマージング株式を中心にリターンはプラスとなりました。

パフォーマンス動向の説明については以上です。