――ありがとうございます。続いて、2024年4月~6月のDCファンドの状況について教えてください。
ここではDC専用ファンドの資金流出入動向について確認します。図3のグラフをご覧ください。4月の資金流出入額は330億円の流入超、5月は1000億円の流入超、6月は780億円の流入超となりました。
図3 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示
おおむね堅調に資金が流入しましたが、4月には複合資産型が流出、外国株式型の流入も低調になっており、月によって動きは異なりました。
資金流出では国内債券型が引き続き目立ちました。日銀の金融政策正常化、金利上昇の懸念から、一貫して資金が流出しています。
次に図4のグラフをご覧ください。直近6カ月の資金流出入額の累積は、外国株式型が2600億円、複合資産型が930億円、国内株式型が540億円となっています。
図4 ファンド分類別 月間流出入額推移(DCファンド) 拡大図表示
外国株式型への流入がさらに拡大しました。引き続き若年層を中心とした加入者から人気を集めているようです。
複合資産型も相応の資金を集めていますが、これまでの安定的な資金流入ペースに比べると、その勢いには陰りがみられます。
国内株式型への流入もやや縮小しました。6月を中心に日本株が上昇する中で、反対に利益確定の動きから、スイッチングによる資金流出が強まったものとみられます。
次に、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか、外国株式型と複合資産型のカテゴリーについて確認します。
まず、外国株式型の6月の月間資金流入額上位15ファンドについてです(図5)。
図5 2024年3月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示
ランキング表のとおり、上位15本すべてがパッシブファンドになりました。MSCIコクサイ指数に連動するパッシブファンドがほとんどとなっています。
しかし、7位には「iシェアーズ米国株式(S&P500)(DC)」、8位には「One DC米国株式S&P500インデックスファンド」、12位には「DC米国株式インデックス・オープン」がランクインしました。S&P500に連動するインデックスファンドは引き続き注目を集めていますが、ランクインするファンド数と順位は少しずつ上昇している印象です。
S&P500は米国の大型株式のみを投資対象とするため、日本を除く先進国株式を対象とするMSCIコクサイと当然値動きは異なります。米国市場の成長性に対する期待もありますが、ここ数年S&P500はMSCIコクサイを上回って推移しており、投資家の人気を集める結果となっています。
パッシブファンドは運用管理費用が低い点が魅力です。流入額上位の3ファンドも運用管理費用は0.1%と極めて低いファンドです。
連動するベンチマークが同一のファンドの間では、パフォーマンスに差が付く要素として運用管理費用の水準が非常に重要です。自分たちが投資するファンドが世間一般のパッシブファンドと比べてどのような水準にあるかはよく確認する必要があるかと思います。
次に複合資産型の資金流入額上位15ファンドについて確認します(図6)。
図6 2024年3月 複合資産型(DC専用ファンド) 拡大図表示
ランキング表のとおり、パッシブファンドが大半となりました。
1位は「DC世界経済インデックスファンド」となりました。こちらは世界の債券・株式に50%ずつ分散投資するバランス型ファンドです。国内債券、国内株式、先進国債券、先進国株式、新興国債券、新興国株式6資産のインデックスファンドに投資します。名前のとおり、世界経済全体の発展を享受することを目指して運用するため、組入比率は各地域のGDP総額に応じて変更する点に特徴があります。
その他のファンドでは一般的な固定資産配分のファンドがランクインしました。低リスクから高リスクのバランス型ファンドまで幅広いファンドがランクインしています。
ランクインしたのは、国内債券、国内株式、先進国債券、先進国株式の伝統的4資産で構成されるバランス型ファンドが大半ですが、10位の「三菱UFJプライムバランス(8資産)(確定拠出年金)」のように、新興国株式・債券や不動産投資信託(リート)も投資対象に含むファンドも近年ではランクインがみられます。リートなどのオルタナティブ資産は株式・債券との相関が小さいことから、ポートフォリオの分散効果を高めることが期待されています。
今後こういった複数の資産を組入れるバランス型ファンドの動向も気になるところです。
資金流出入動向の説明については以上です。