次に、修繕についてです。 老朽化でも解体しない場合に需要が伸びるでしょう。
築浅の方が高い賃料を取りやすいとはいえ、解体・建築コストや賃料収入、環境負荷などを総合判断した結果、50年経過しても修繕して使い続ける企業が実際にあります。特に昨今の建築費上昇が主要なファクターで、建て替えの採算が合わなくなったものには、修繕する動機が強く生まれています。実例として、建て替えのためテナントを退去させたものの建築コスト上昇で、リニューアルしてからテナント誘致を再開しているケースが出てきています。 また、近年のスケルトン・インフィル方式(躯体と内装設備の分離)の建築のおかげで、先に老朽化する設備を理由にした解体が減り、修繕にシフトしていくと予想されます。

以上より、高層建築の解体・修繕業界の企業が業績を伸ばすと考えています。このセクターは十分にスポットライトが当たっておらず、建築行為そのものに注目が当たっていると感じており、投資妙味がありそうです。
なお、古いビルの解体と修繕で一定程度トレードオフが発生することが想定されます。将来どちらが主流になるかを関連各企業との対話で確認してみたところ、解体の方が優勢でした。一方で私は、環境負荷や人口減少などの長期的潮流を考慮すると、修繕がより活用されるのではないかと考えています。以上のことから繰り返しにはなりますが、サステナビリティの観点で高層建築が再定義されることに期待します。

【引用】
*1 国土交通省 建築物ストック統計 2018年 「住宅」の非木造>共同住宅、「法人等の非住宅建築物」の非木造>事務所・店舗を10年単位で集計
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001103618&cycle=7&year=20180