今回は高層建築の解体・修繕についてです。日本のビル・マンションは手直しの時期を迎えつつあり、サステナビリティという観点でも投資テーマとして私は期待しています。

まずは解体についてです。解体に注目する理由は大きく3つあります。
① 老朽化
② デベロッパーの変化
③ 用地の枯渇
各項目を詳しく見ていきます。

① 老朽化
老朽化が進行しています。
インフラ(https://www.commons30.jp/pdf/fund2020/2020pdf_2023_7.pdf
、p6)と同様に、高度成長期(1955年頃~1973年頃)に建てられた高層建築は全て50年が経過しています。今後竣工50年を迎える建物の床面積を見ても増加基調で、2040年代にピークを迎えます*1。
本来、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)の建築は用途によるものの、おおむね40~50年程度の耐用年数のようですが、1981年6月以前の建物は新耐震基準に準拠していないこと、躯体より内装・設備が先に老朽化すること、新築の方が物件価値が高いことなどから、「メンテナンスに費用をかけるぐらいなら新築する」という傾向があるようです。ちなみに、潮風の当たるエリアの建築は早期に構造劣化に直面するでしょう。

② デベロッパーの変化
新しい高層建築を多く作る動機がデベロッパーに生まれています。東京証券取引所によるPBR1倍割れ(会社の保有資産総額より株式時価総額の方が低い状況)の改善要請などを受けて、不動産開発会社は資本と利益の効率を意識するようになりました。つまり、安定利益を犠牲にして賃貸物件を売りに回すことで、固定資産の圧縮と利益計上を優先するようになったということです。その結果、収益性の悪い賃貸物件を譲渡するだけでなく、新築賃貸の短期売却や利益率の高い分譲マンションへの注力等が進行しています。

③ 用地の枯渇
特に資産価値の高い、東京都心部の一等地の出物はもう希少になってしまったようです。
入札案件があったとしても、激しい争奪戦で利ザヤがなかなかとれないそうで、不動産開発会社の長期的な利益の継続性が危ぶまれます。そこで外部に売却せず、自社や自社組成REIT(不動産投資信託)の中で物件・土地の回転売買サイクルを完結させる動きが強固になってきています。理由②と合わせて、自社グループ物件を壊すことで新築用地と利益を確保していくでしょう。
以上の①~③より、スクラップ&ビルドが加速していると言え、私は解体に関わる企業に期待しています。