「どうせバレないだろう」は禁物!

「どうせバレないだろう」とタンス預金の相続税申告を怠る人もいますが、これについては声を大にして「ダメ!絶対!」と言わせていただきます。なぜならタンス預金は高確率で税務署にバレてしまうからです。

そもそも税務署は、相続税の調査対象者選定にあたってかなり精密な計算をしています。具体的には、過去の確定申告や給与のデータをもとに「これくらいの稼ぎがあった人が〇歳まで生きれば、これくらいの財産はあってしかるべき」という数値をはじき出した上で、その数値よりも資産額が大きく下回っている先に調査に入るようにしているのです。つまり、申告からもれているタンス預金額が多ければ多いほど、調査対象に選定されやすくなります。

そしていったん税務調査が始まれば、税務署は過去何年もさかのぼって銀行口座の出金記録を調べ上げます。使用目的が不透明な出金が見つかれば、タンス預金として保管されている可能性を追及します。銀行などに照会をかけて家族の口座もチェックします。

以上のような調査で外堀を埋めていき、タンス預金の存在の確証を得たら、あとは所在を突き止めるだけです。税務署の相続税担当者は、長年の経験から「タンス預金のありか≒現金の隠し場所」について精通しています。タンスや押し入れ、床下、土中、天井裏、仏壇、布団・座布団、衣類などありとあらゆる場所を徹底的に調べますし、調査対象者のちょっとした顔色の変化も見逃しません。「多額のタンス預金は隠しきれないものだ」と心得ておくべきでしょう。

新紙幣発行であぶりだされるタンス預金

ただでさえ税務署の厳しい目が光っているタンス預金ですが、新紙幣発行によりこれまで以上に「あぶり出し」が進むことになるでしょう。タンス預金している旧紙幣は、新紙幣の普及とともにいずれはATMで読み取られなくなるなど「時代遅れ」になります。将来、時代遅れになった多額の旧紙幣を金融機関に持ち込んだり、不動産購入に充てたりしようとすれば「このお金の出どころは?」と怪しまれることになります。そこで今後、タンス預金をしていた人たちは、新紙幣に交換するためタンス預金を銀行に持ち込むなどの対応を取らざるを得ないというわけです。

繰り返しになりますが、そもそもタンス預金は保持しているメリットよりもデメリットのほうが何倍も大きいです。また利回りも得られず、インフレにも弱く、投資にもならないタンス預金は「生きた資産」にはなりません。足元でインフレが進み、「金利のある時代」に突入する今、なおさらデメリットは大きくなっていくでしょう。ぜひ新紙幣発行となったこのタイミングで、タンス預金の扱い方を考えてみてください。