多くの人を引き付けてきたタンス預金の4つの魅力

タンス預金とはいわば比喩表現で、タンスや押し入れ、金庫など家庭内で保管しているあらゆる現金のことを指します。金融機関などに預けず、あえてタンス預金として保有しておくことには、大きく分けて4つのメリットがあります。

まず、金融機関の破綻から資産を守れます。銀行にはペイオフという制度があり、銀行破綻時に預金額1,000万円までは保証されますが、超えた部分は失う羽目になるのです。一方、タンス預金であれば金融機関の破綻を気にする必要がありません。

また、いつでも入り用なときにお金を使えます。金融機関に預けていると、窓口やATMの営業時間外ではお金を引き出せませんし、窓口での使途確認やATMの限度額などにより多額の現金の用立てには不便なこともあります。

さらに、口座凍結の心配がない点もメリットでしょう。銀行預金だと、口座の名義人が亡くなったことが金融機関に知られたらお金を引き出せなくなり、遺産分割協議を経て所定の手続きをするまで凍結されます。一方タンス預金であれば、遺族であっても使いたいときにいつでも使えます。家族が亡くなった直後は葬儀や遺品整理などでなにかとお金が必要ですから、凍結の心配のないタンス預金は便利と言えるでしょう。

そして、タンス預金のなによりの特徴が秘密性です。国は法令に基づき、税務調査などで個人の預金口座を特定・確認できます。しかし、タンス預金は当然ながらこの限りではありません。

メリット以上に大きいデメリット

もっとも、タンス預金には先述のメリット以上に大きなデメリットがあることには留意しておきたいものです。まず、タンス預金は盗難や火事、地震などによって滅失してしまうリスクがあります。金融機関の破綻よりも断然高い確率で資産を失うリスクがあると言えるでしょう。

また紛失してしまうリスクもあります。タンス預金をしていた本人が肝心の保管場所を忘れてしまうこともあるでしょうし、保管していた本人が亡くなってしまえば遺族が気付かないまま遺品や不用品に紛れて廃棄・処分されてしまう恐れもあります。

さらに秘密性の高さゆえに、遺産分割で大きな火種になるリスクもあります。タンス預金はその存在や合計残高を証明する手段がないため、相続人の間でタンス預金の有無や金額を巡ってもめ事につながることは珍しくありません。

最大のリスクは相続税申告

そして最も深刻なのが相続発生時の課税リスクです。タンス預金も言うまでもなく相続税の課税対象ですので、しっかり財産として申告する必要がありますが、管理していた本人以外が見つけにくいのがタンス預金の特徴です。そのため、相続税申告後になってから新たにタンス預金が見つかり、遺産分割協議のやり直し・修正申告をしなくてはならないケースも多いのです。

修正申告を余儀なくされた場合、増えてしまうのは手間だけではありません。相続財産の増加分に応じて新たに納税する必要がありますし、申告期限から修正日までの日数に応じて延滞税も支払わなければならないのです。