前工程・後工程の区別が曖昧化

日本が半導体の復権を目指す上で、製造の「前工程」については上記のようなさまざまな施策が講じられていますが、半導体を製造する上で必須なもう一つの「後工程」についてはどうなっているでしょうか。

具体的な計画や戦略を耳にすることはあまりありませんが、現在、後工程の受託生産を行なうOSATメーカーとしては、ASE(台湾)、Amkor (アメリカ+韓国)、JCET(中国)などがあります。

しかし、台湾有事を含む半導体サプライチェーンの確保という観点から見ると、筆者には何か、議論に欠けがある感じがしています。

半導体の3次元化を含む先端パッケージング技術の進展と、チップレット技術の普及・向上という面で見ると、OSATの業務内容の変化やOSATを巡る業界の再編などが起きる可能性を否定できません。

また、生成AI用に使われているGPUの需要増に対処するため、TSMCが複数の先進パッケージ技術(3D Fabric:TSMCの呼称)の一環としてのCoWoS(コワース)生産を台湾のASEに一部委託したというニュースも報じられています。

このように半導体生産において従来の前工程と後工程の区別が徐々に曖昧になり、融合化されつつある状況を勘案し、半導体システムとしてどうすべきか、という視点から今後の計画・戦略を立てることが強く求められていくことでしょう。

最近、アオイ電子(高松市)が国内に今後350億円を投じて純国産OSAT工場を設置するとのニュースもあり、政府としても「国内投資促進パッケージ」に沿ってこの計画を支援するとのことです。また横浜市のサムスン半導体研究拠点に総事業費400億円のうち半分を経産省が支援して「3D化の次世代技術開発」が行なわれるとのニュースもあります。

次は装置業界、材料業界が狙われている

日本の半導体デバイス業界の凋落に比べ、日本の製造装置業界の世界シェアは40%強、材料業界は60%強と、非常に健闘しているといえるでしょう。

しかし今後を考えると、決して安穏としていられる状況ではありません。例えば装置業界を例に取ると、この10年で売上高は3倍に増加しているのに対し、世界シェアは一時期に比べて7%も低下しています。

これは、日本の半導体装置業界が売上は伸ばしてきたものの、世界全体の伸びに比べれば劣っていることを示しています。このデータから考えると、装置業界についても将来に向けて不安を感じさせられます。

台湾、韓国、中国などは半導体ビジネスに参入するに際し、最終製品に直結し市場規模も大きく、より戦略的・系統的に攻めやすいデバイスビジネスから着手し、成功を収めました。

したがって彼らは「次は装置業界と材料業界」をターゲットに据えているのは誰の目にも明らかであり、いくつかの装置分野ではすでにその兆候が表われ始めています。

半導体やディスプレイ(液晶、有機EL)の二の舞になることなく、現状のポジションを維持し向上させていくためには、半導体技術の今後の流れ(デバイス、プロセス、材料、システム化など)を見極め、新規技術の開発と実用化に多くのリソースを投入していくことこそ肝要です。