交付目論見書に記載されるようになった「総経費率」とは
では、そもそも投資信託の運用コストとは何を指すのでしょうか。これまで投資信託の運用コストといえば、「信託報酬」を指すのが普通でした。
信託報酬とは、ファンドを運用する投資信託会社、ファンドの信託財産を管理する受託銀行、そして購入・解約資金、ならびに分配金の受渡業務を行う販売金融機関の三者に対して、受益者が信託財産の中から支弁するコストです。
しかし、投資信託の運用コストは、信託報酬だけではありません。この点がクローズアップされ、この4月から交付目論見書における義務付けられたのが、「総経費率」です。
投資信託の運用コストは信託報酬に加えて、たとえば組入資産を売買するに際してかかる売買委託手数料や、ファンドの監査費用、インデックスファンドであれば指数使用料金などが掛かってきます。これら全てを経費として示したのが、総経費率になります。
総経費率を示すメリットは、本当の意味での運用コストが明らかになることです。実際、ファンドによっては信託報酬に対して、総経費率が倍近くまで達しているファンドもあると言われています。
たとえば、信託報酬が年率1%と表示されているのに、総経費率が2%だとしたら、これは全くもって運用コストの実態を反映していないことになります。
そのため、総経費率が交付目論見書に記載されるようになったのは、受益者にとって一段と運用の透明性が高まったことを意味するという点において、非常に喜ばしいことだと思います。
インデックスファンドはコストが低いから…“正しい”?
ただ注意しなければならないのは、運用コストの高低について、ある種の誤解が生じている恐れがあることです。
「運用コストの低さは、リターンの向上につながる」。この点について疑いを持つ人はいないでしょう。
たとえばAファンドの運用コストが年1.5%で、Bファンドのそれが年0.5%だとします。これによって1%のコスト差が生じます。このコスト差を運用能力で跳ね返すのは非常に難しいので、運用コストは低いに越したことはない、ということです。
確かにその通りなのですが、「インデックスファンドはローコストで運用できるから正しい」というのは、果たして本当なのでしょうか。
実際、ここを強調してファンドの販売促進につなげている投資信託会社があります。商品サイトのページにも「信託報酬とは、投資信託の運用や管理にかかる費用となります。この率が低ければ低いほど、一部例外を除き一般的には、低コストで運用ができます」などと書かれているわけですが、この説明書きがされている投資信託は、インデックスファンドです。
信託報酬か総経費率か、について問題にしているのではありません。インデックスファンドで運用コスト差を問題にする意味が、どれだけあるのかを問いたいと思います。