マーサーでは毎年、今後数年間の市場テーマと投資機会を表すタイトルをグローバルで考えており、2024年は「アジリティの時代(An age of agility)」に決定しました。アジリティとはスポーツなどでよく用いられる言葉で、敏捷性や機敏性といった意味があります。投資家の皆さまに対し、これまで以上に機動的に運用していただきたいというメッセージを込めました。

なぜアジリティが重要なのかと言うと、今まさに市場環境がダイナミックな変化を遂げつつあるからです。変化を具体的に挙げると、時間軸の短い順に、➀各国金融政策の変更などに端を発する足元の「レジームチェンジ」、②通常の景気サイクルの2~3倍の長さで続く「スーパーサイクル」、③今後数十年間にわたって続くと見られる「メガトレンド」の3つがあります。以下、それぞれのトレンドの内容や想定される投資機会について解説していきます。

マーケットの偏りが生み出すレジームチェンジ

最初に取り上げるトレンドはレジームチェンジです。マーケットの動きは一時的なものが多く平均回帰するのが一般的ですが、何らかのパラダイムシフトが起きると偏りが続くことがあります。このようにマーケットの偏りが新たなスタンダードになる現象をレジームチェンジと呼びます。[more]

足元で起きているレジームチェンジとしては、銘柄間格差の広がりを意味する「ばらつき」や市場混乱によりボラティリティの高まった状態を示す「ディスロケーション」、そして効率的フロンティアの平たん化に基づく「効率的なリターンの獲得」と大きく分けて3つが挙げられます。

まず1つ目のばらつきが世界的に目立つようになってきました。従来は中央銀行の各種政策により低金利・低ボラティリティの状態が長く続いてきましたが、コロナ・ショックや利上げなどの政策変更を経て現在はばらつきが高い状況にシフトしつつあります。

ばらつきが目立つ状態になると、アクティブ運用でアルファ獲得の機会が広がるというメリットが生まれます。ばらつきがなければいくら銘柄選択を頑張っても成果に結びつきませんが、ばらつきがある状態でうまく銘柄選択できればその結果がアルファという形でリターンになるのです。

実際S&P500における「マグニフィセントセブン」のリターン貢献度合いの推移を見てみると、オーバーウェイトしているかアンダーウェイトしているかで大きな差が開いています(図表)。青線は時価総額加重平均、緑線は均等加重平均の推移を示しており、時価総額に応じてマグニフィセントセブンの組み入れ額が大きい青線のほうが高リターンとなっています。かつてはリターンにあまり違いがありませんでしたが、徐々に差が大きくなっているのが分かります。

図表 優良銘柄の選別によりリターンが拡大

 


投資機会としては今後、アルファ獲得を目指すアクティブ運用やヘッジファンドなどの活用余地がこれまで以上に出てくるのではないでしょうか。