「持続的な成長企業」に厳選投資しインデックスを上回る成績

ただ、その中でもなぜ、2強といえるほどに2本のアクティブ投信が頭抜けた存在であり続けるのか? それぞれの投信の生い立ちを調べたら、その理由が見えてきた。

まず、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は、設定が2014年9月。2006年5月に設定された年2回決算型の「Aコース(為替ヘッジあり)」と「Bコース(為替ヘッジなし)」があったが、この投信の評価が高まったのは、毎月決算型の「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」が設定されてからだ。それまでは1本あたり残高が100億円に届かない投信だった。「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」の設定以来、同投信に対する評価が高まっていく。その背景に、同投信の取り扱い販売会社数の拡大があった。「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」の取り扱い販売会社数は2015年末に6社だったが、2019年末には33社に拡大し、2021年末に60社、2024年3月末には70社となり、さらに、取り扱いを検討している販売会社が複数社あるという。

アライアンス・バーンスタイン社に同投信の人気化の背景を聞くと、「景気に左右されずに自らの利益を再投資することで、長期安定的に成長できる『持続的な成長企業』に厳選投資を行うこと。イノベーションや労働人口増などで、世界経済を引き続きけん引することが期待できる『米国株式』は、ポートフォリオのコアとして保有するに適したファンドであることを、約10年にわたり丁寧に説明してきたことも、ご支持いただけた要因の一つと考えます」という回答だった。設定来のトータルリターンは、米国株インデックス「S&P500(配当込み、円ベース)」を上回るパフォーマンスを残しているという運用力に加え、丁寧な情報提供によって地道に販売会社を拡大してきた努力が、今の残高増につながっている。分配金は基準価額の水準によって決定されている。2023年6月以降は毎月200円が支払われ、2024年2月と3月は300円に増額された。4月の分配金は基準価額の上昇に応じて400円になった。

「顔の見える運用」めざし年間500回の勉強会を実施

一方、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)【愛称:世界のベスト】」は、1999年1月の設定で25年超えの歴史がある投信だ。ただ、純資産総額が100億円を超えたのは2018年6月末のことで、残高増が目立ってきたのは、2021年10月に残高が1000億円を超えたあたりからだった。この投信の取り扱い販売会社数は、2017年12月末までは18社だったが、2021年末に27社、2022年末に33社だったものが、2023年末には47社に急増し、2024年3月末には52社となり、さらに複数の販売会社が取り扱いを検討しているという。

インベスコ・アセット・マネジメントに人気の背景を聞くと「コロナ禍の間も、長くお取り扱いを頂いているメガバンクや地方銀行を中心に、販売会社様向け勉強会を開催し、わかりやすいレポートや動画を作成する等、情報提供に努めて参りました」と、やはり情報提供など丁寧な説明の取り組みを強調した。「2023年には約500回もの勉強会を実施しました。また、『顔の見える運用』というコンセプトのもと、運用責任者および運用チームメンバ―が数カ月ごとに来日して、直接販売員の方々にファンドの運用状況をご説明しています。そうした取り組みもあり、特に昨年、新たに多数の販売会社様にご採用いただくことができ、好調な資金流入が継続しています」と、販売会社の拡大が残高増の大きな力になっている。設定来のトータルリターンは、先進国株式の代表的なインデックスである「MSCIワールド・インデックス(円ベース)」を上回る実績を残していることも残高増に寄与しているといえるだろう。分配金は2017年1月以降は毎月150円以上を実施した上で6月と12月を中心にボーナス的な上乗せ分配を実施。2020年1月以降は毎月150円を継続している。

販売会社の説明力がワークすることで「売れる投信」に

アクティブ投信2強に共通していることは、しっかりした運用成績に加えて、取り扱う販売会社の大きな広がりがあることだ。当然、インデックスファンド2強も販売会社の数は多いだが、取り扱いはインターネットによるオンライン販売に限られる。米国「S&P500」などよく知られた株価指数(インデックス)に連動することをめざすため、特段の説明がなくても、その商品性は理解され、投資家の自発的な注文で残高を拡大してきた。これに対し、アクティブ投信は、「インデックスとは何が違うのか」、「誰が運用するのか」、「過去の運用実績はどうだったのか」など、商品の理解にはさまざまなポイントを知る必要がある。資料や動画などを通じてインターネットで情報を届ける方法もあるが、投信について経験が浅い投資家や、投資未経験の人が、納得いく理解を得るためには、やはり、訓練された販売員による説明が必要になる場面もあるだろう。

優れたパフォーマンスに加え、分厚い販売会社のネットワークがあってこそ、何年にもわたって残高を積み上げることが可能になっている。そして、既にできている販売網は、優れた運用成績と納得のいく説明が得られ続ける限りは、継続的にワークし、さらに、販売網の拡大につながっていく。
新NISAによって、新たに投信を購入する人が増えているとはいえ、日本では、まだまだ多くの国民が預貯金に資金を預けている。投信の利用経験がある人は各種の意識調査で20%~30%程度とみられ、依然として、投信を使ったことがない国民が大半だ。そのような人にアプローチする有力なチャネルが銀行や証券会社の販売員を通じた説明だろう。アクティブ投信2強は、幅広い販売会社を通じて、多くの国民に届けられるチャンスがある。投信会社の販売会社との緊密なリレーションが、アクティブ投信としての成功を導いているようだ。