日東電工の株価が急伸しています。今期(2024年3月期)は減収減益の予想ながら投資家の評価は高く、株価は上昇傾向にあります。2024年1月に発行済株式の2.1%に相当する上限300万株(300億円)の自社株買いを発表すると、過去の高値(2017年11月:1万1750円)を突破し上場来高値を更新しました。

【日東電工の業績】

  売上高 純利益
 2022年3月期 8534億円 971億円
 2023年3月期 9290億円 1092億円
 2024年3月期(予想)  9200億円  1000億円

※2023年3月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想

出所:日東電工 決算短信(外部リンク)

日東電工は市場評価性(PBR基準)から「JPXプライム150指数」に採用されています。

日東電工とはどのような企業なのでしょうか。概要と事業内容を押さえましょう。また日東電工が世界で初めて開発した二次元材料向けテープも紹介します。

光学フィルムや産業用テープが主軸 薄い材料で厚い利益

日東電工は大手化学メーカーです。PCやスマートフォンなどの電子製品、また自動車や医薬品といった幅広い業界向けに材料を製造し販売しています。1918年に設立された100年企業で、2003年までは日立製作所グループに属していました。また粘着クリーナーの「コロコロ」は日東電工のヒット商品の一つです。

日東電工は薄型の製品で高いシェアを持つ企業です。モバイル機器や自動車のディスプレイに用いられる偏光板や光学フィルム、電子部品の製造工程で用いられる粘着シート、プリント回路などが収益を支えています。

【セグメント売上高(2023年3月期)】
インダストリアルテープ:3429億円
・オプトロニクス:4824億円
・ヒューマンライフ:1286億円
※インダストリアルテープ:基盤機能材料(接合材料、保護材料、プロセス材料、自動車材料)
※オプトロニクス:情報機能材料(光学フィルムなど)、プリント回路
※ヒューマンライフ:ライフサイエンス(核酸医薬)、メンブレン(高分子分離膜)、パーソナルケア材(衛生材料等機能性フィルム)

出所:日東電工 セグメント別の状況(外部リンク)

製品とは対照的に利益には厚みがあります。売り上げから原価を除いた売上総利益率は30%台後半、さらに販管費を除いた営業利益率は10%台半ばと高水準です。同業(化学)に分類される東証プライム上場企業と比較すると、日東電工の利益率の高さがうかがえます。

【利益率の比較(2023年3月期)】

   日東電工   東証プライム化学 
(98社)
 売上総利益率 36.3%
 営業利益率 15.8% 8.7%
 純利益率 11.8% 5.8%
 株主資本利益率(ROE) 12.7% 8.6%

出所:日東電工 決算短信(外部リンク)、日本取引所グループ 決算短信集計結果(外部リンク)