始まった父親からの電話攻撃

その帰省がきっかけとなったのか、翌朝から父の電話攻撃が始まりました。

話の内容は「ごみの分別ってなんだ?」「回覧板はどこにまわす?」「町会費の集金がくるらしい」など、ささいなこと。時間を気にせず携帯にかけてくるので、仕事中も気が休まりません。

また、介護保険の申請を手伝ってほしいらしく、「いつになったら帰ってくるんだ!」と怒られることも度々です。

「これは大変なことになったぞ!」

父親に何が起こっているのか分からないまま、急きょ仕事を休んで実家に帰ることにしました。

勝手に決まった「キーパーソン」。親の介護は長女の仕事?

数日実家で過ごして分かったのは、ご近所さんの優しさでした。回覧板やごみの収集など、身の回りのこまごまとしたことを、足の悪い父に代わり厚意で手伝ってくれていたようです。

ただ、いつまでも甘えているわけにもいきません。父が満子さんに電話攻撃をした理由もそこにありました。

そうであればと、今後必要になりそうなことはメモに残し、介護認定のための訪問調査に同席。地域包括支援センターにも足を運び、地域のサポートが使えるように道筋をつけました。

「これでしばらく、電話がかかってくることはない」

そう思いこんでいた直後に、今度はケアマネジャーから急ぎの連絡が相次ぐようになったのです。

介護の現場では、ケアプランの作成や緊急時の対応、治療方針の決定など家族の意見を聞くことが増えています。ただ、家族それぞれの想いが違うと医療者側も困ります。そこで家族の代表者となるキーパーソンを決め、何かあるとその人に連絡を取るようになってきました。

満さん家族の場合、長女であり訪問調査にも同席した満子さんが適任ではないか。ケアマネジャーの助言もあって、父が本人に相談もないままキーパーソンを決定。どうりで連絡が来るはずです。

「長女だからって、なんでいつも私ばっかり……」

嘆く満子さんでしたが、夫から「このままでは君が先に倒れるよ」と言われたことが転機に。満子さんの負担軽減についてできることを探っていきます。

●遠方の実家への帰省は思った以上にお金がかかるもの。満子さんの負担を見える化し、負担を減らすための3つの対策を考えました。後編【50代女性「長距離介護」で月収の3割が吹き飛ぶ厳しい現実…負担減に向けたFPからの「3つの提案」】で詳説します。