市況悪化で苦戦 一部売却で資金は回収
丸紅はガビロン買収で穀物のグローバルリーダーになるはずでした。しかし悪いことに市況の悪化に巻き込まれます。
穀物の国際価格は米国の乾燥を背景に2012年まで値上がり傾向にありました。しかしその後は値を下げ始め、ガビロン取得後もその傾向が続きます。特に2014年以降は順調な生育が在庫を増加させ、穀物全般に強い下落圧力が働きました。
【米国小麦先物の価格推移(月足終値、2013年1月~2015年3月)】
市況悪化を受けガビロンは苦戦します。業績が想定を下回ったため丸紅は減損を強いられました。損失の額は2014年度で481億円、2019年度では783億円に上ります。2019年度は他の資産でも減損を認識したことから最終赤字に転落しました。
その後は市況が回復しガビロンは持ち直しますが、丸紅はこれを売却の機会と捉えます。丸紅は2022年1月、ガビロンの肥料事業を丸紅グループに移管し、穀物事業を残したガビロンをグループ外へ譲渡すると発表しました。肥料事業の継続は既存のアグリ事業とシナジーが期待できること、穀物事業の売却は収益性が相対的に低いとの判断からでした(出所:Gavilonの再編及び株式譲渡に関するお知らせ、2021年度決算説明会 主な質疑応答(要旨))。
ガビロンの売却は同年10月に完了します。丸紅はガビロン向け融資を含め30億ドル(4300億円)の資金を回収し、550億円の売却益を得ました。穀物メジャーへの挑戦は頓挫しますが、投資としては成功ともいえそうです(出所:Gavilon株式譲渡の完了に関するお知らせ)。