55~64歳は「積み立て」と「退職金運用」で資産を作る

問題は資産形成層の最終年齢に近い人が、これから資産形成を始める場合です。

といっても55歳から始めるなら、まだ可能性はあります。たとえば60歳で定年を迎えた人が65歳まで雇用延長で働き、その間に受け取った退職金も含めて運用に回せば、それなりに格好はつくはずです。

たとえば55歳から64歳までの10年間、毎月6万円ずつ積み立てていくと、10年間で積み立てた元本部分は720万円になります。これに加えて、この年齢層の人たちにとっては退職金も、重要な運用原資になります。

一般的な高齢者向けのライフプランニングでは、どうやら退職金の額を2000万円程度に想定しているケースが多いようですが、これは大企業のケースです。日本は大半が中小企業なのですから、中小企業の退職金をモデルにするべきでしょう。1000万円程度がその額になります。

退職金が1000万円で、55歳から64歳まで積み立てられる元本が720万円ですから、合わせて1720万円。生涯非課税枠の1800万円には若干届きませんが、ここまで積み立てられれば御の字でしょう。

しかし、せっかくですから、インデックスファンド1本だけで積み立てるのは、何だか工夫がなくて面白くありません。55歳からの資産形成にはもう少し工夫を凝らしてみましょう。

アイデアの1つとして、成長投資枠とつみたて投資枠の合わせ技を考えてみたいと思います。この事例で問題になるのは、1000万円の退職金をどうやって運用するか、ということです。

毎月6万円はつみたて投資枠を用いて、全世界株式に投資するインデックスファンドを積み立てていけば良いと思います。ですが、1000万円を一括で受け取った場合、それを預金に置いておきますか?

そこで退職金の1000万円は、成長投資枠で運用することにします。投資対象はJ-REITです。J-REITの分配金利回りは、ファンドにもよりますが、年4~5%程度になります。仮に5%の分配金利回りで運用できれば、1000万円の投資元本から毎年50万円の分配金収入を得ることができます。

しかも新NISAを利用すれば分配金も非課税ですから、まるまる50万円を受け取ることができます。1カ月にすると4万円とちょっとです。同時に、65歳になる直前には全世界株式のインデックスファンドで720万円の投資元本が積み上がっているので、運用収益も含めれば800万円程度にはなっているでしょう。

その後、そこから200万円分を成長投資枠に移してJ-REITを買っていきます。そうすれば、全世界株式のインデックスファンドとJ-REITのポートフォリオを持てます。1200万円のJ-REITから年5%の分配金収入が得られるとしたら、その額は年間60万円、月にすれば5万円になります。公的年金に加えて毎月5万円の分配金収入が得られれば、老後の資金計画はそれなりに楽なものになるでしょう。