今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、これまで別々に語られてきた経営と金融の「サステナブル」をつなげる方法を探った書籍、小野塚惠美著『サステナブル経営とサステナブル金融の接続』の一部を特別に公開します。(全2回/本記事は前編)。同書を解説する無料セミナー情報も!
※本記事は小野塚惠美著『サステナブル経営とサステナブル金融の接続』(金融財政事情研究会)から一部を抜粋・再編集したものです。
いま起こっていることと本書の目的
本書の目的は、サステナブル経営の理論と実践、サステナブル金融(以下「サステナブルファイナンス」という)のあり方を概観したうえで、サステナブル経営とサステナブルファイナンスを接続させる思考を展開し、そのうえで、価値創造の観点から未来への展望を描くことである。ここでは、本書でのサステナブル経営とサステナブルファイナンスを接続する試みにおいて、企業人が“サステナブル(持続可能性)”を「自分ごと」として腹落ちしていない、という点から議論を始める。
まず、地球温暖化を中心とした環境破壊のおそれは、少なくとも1970年代の「ローマ・クラブ」(※1)の議論ですでに顕著になっていた。しかし多くの企業人はこの問題を「自分ごと」として内部化できなかった。その後、新自由主義を標榜するミルトン・フリードマンが『選択の自由』(※2)を著して広く受け入れられていった。企業人の感覚では、環境保護は(日本では1960年代から対応が始まっていた公害問題と同様に)国際機関や政府などが主体となって「規制」するものであって、企業活動の外部にあると想定される。フリードマンが述べるように、企業はそのような社会の要請に基づく規制のもとで、自由に行動し利益の最大化を目指す存在のはずであった。
※1 ドネラ・H.メドウズ『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』(ダイヤモンド社、1972)