新NISAの浸透で金融資産課税の強化はあるのか……
なぜ反対意見が少ないと考えられるのかというと、1800万円の非課税保有限度額を満たせるだけの金融資産を保有している世帯が少ないと考えられるからです。
金融広報中央委員会が毎年行っている「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」によると、世帯主の年齢別で見た金融資産保有額の平均値は、以下のようになります。ちなみにカッコ内の数字は中央値です。
20歳代……339万円(200万円)
30歳代……697万円(390万円)
40歳代……1132万円(500万円)
50歳代……1684万円(810万円)
60歳代……2317万円(1270万円)
70歳代……2360万円(1200万円)
平均値で見ると、60歳代や70歳代では1800万円を大きく超えていますが、平均値はどうしても金額の大きいところに引っ張られる傾向があります。たとえば貯蓄額が、
Aさん……1億円
Bさん……5000万円
Cさん……200万円
という3人がいた場合、平均貯蓄額を計算すると5066万円になりますが、Cさんからすれば「それってどの世界の話?」ということになるでしょう。平均値は、それほど数字に大きな格差がない集団における平均的な実態を把握するには良いのですが、貯蓄額のように、格差の大きな集団の平均的実態を把握するには、いささか無理があるのです。
そこで用いられるのが中央値です。中央値はすべての値を順番に並べて、その中央に位置する数値を用います。そのため、平均値を用いる場合に比べると、より実態を反映しやすいとも言えるのです。
その中央値で見ると、どの年齢層においても、1800万円という新NISAの非課税保有限度額に達していません。このことから、1800万円の非課税枠があれば、そして多くの人が新NISAを活用して資産運用をすれば、金融資産課税を強化したとしても、世論からの風当たりは、さほど強くならないのではないか、と考えられます。
それだけに案外、新NISAが浸透していけば、早晩にも政府は金融資産課税の強化に乗り出してくる可能性がありますし、そういう状況からすると、個人の新NISA口座の開設は、必須と言っても良いのです。
●参考
・「超高齢化社会における資産と税」
・マル優制度等(少額貯蓄非課税制度等)の変還
・「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」