なぜ、“1800万円の非課税枠”は認められたのか?
直近、発表された日本証券経済研究所の「証券レビュー」で、「超高齢化社会における資産と税」と題したエッセイが掲載されています。そのなかで興味を持ったのが、「超高齢社会における資産課税」という項目です。
一部を引用してみます。
「高齢化の進展によって、資産の重要性が増大する。すなわち、高齢期には、所得水準が低下する場合が多いが、他方で、勤労世代をはるかに上回る資産を蓄積している高齢者も数多く存在する。実際、金融資産の4割近くは70歳以上の高齢者世帯が保有しているとする統計もある。(中略)したがって、高齢者の比率が著しく高くなる超高齢化社会においては、資産課税により注目するべきなのではないだろうか。(中略)資産保有者からの反発が予想され、政治的にはなかなか実現困難であろうが、消費税の引上げや中堅所得層を対象とした所得税増税に比べれば、該当者が少ない分、抵抗が弱いかもしれない」。
そして実は、新NISAがスタートするというニュースが流れた2022年の初冬あたりから、この手の話がまことしやかに流れてきました。
恐らく、大部分の個人にとって、保有している金融資産に対する課税強化は、なかなか容認し難いものがあると思いますが、金融資産に対する課税強化は、今に始まった話ではありません。2006年までは、個人の預金などを対象にして、マル優、特別マル優、郵貯マル優という預貯金ならびに日本国債や地方債を対象にして、それぞれ元本350万円までの利子に対して課せられる税金を非課税にする制度がありました。
これを利用すれば、350万円×3で、合計1050万円までの元本に発生する利子を非課税にできましたが、2006年以降、マル優制度は一部の例外を除いて廃止になりました。ここ20年以上は超低金利が重なったこともあり、マル優制度を利用するメリットは皆無に近いのですが、基本的にこの手のマル優廃止も、実質的な増税といっても、良いでしょう。
そして今、再び持ち上がってきた金融資産課税の強化ですが、基本的にはこれとの引き換えに、新NISAに対して1800万円もの非課税保有限度額を認めたのではないか、と考えることが出来ます。
同エッセイによると、金融資産に対する課税が強化されるのは、たとえば保有する金融資産総額が1億円以上というように、一定の所得水準を設け、それに達している人を対象にすることもできる、という見方を示していますが、恐らくこの手の水準を設けなくても、金融資産課税の強化に対する反対意見は、案外、少ないのではないかと考えられます。それは、新NISAに1800万円もの非課税保有限度額が認められたからです。